日本で暮らしていた主人公の少女は、神社で奇妙な面を付けた人物から玉を、それぞれの両手に貰う。このことで、主人公は塩の雨を降らせたり、止ませたりできるようになった。
大学生になった主人公は、クマリという現人神を祀る国・ゴルカナを訪ねる。クマリとは、幼女の内にある儀礼を受けて現人神になる者を指す。クマリは血を流すとその資格を失い、次の幼女のクマリの選定に入る。そんなクマリたちはかつて、クマリの資格失効後に、辛い人生を歩んでいた。日本で言う来訪神である主人公は一日クマリとして、元クマリの女性から案内され、現・クマリと出会う。
クマリは現人神として人々の安寧をもたらす一方で、人知れず異界で蟻と戦っていた。この蟻は、人々の負の感情を餌にして、さらに負の感情を煽るという負のスパイラルを引き起こしていた。そのため、この蟻の女王アリをクマリは代々退治してきたのだ。しかし、蟻の弱点は塩水。海のないゴルカナでは大量の塩水を調達できない。そこで選ばれて連れてこられたのが、主人公だった。ところが、蟻の存在はクマリが言うには、必要悪だという。
そんな主人公は蟻の存在を通して、自分の周りで裏切り者たちが跋扈しているのを知り、その結果、ゴルカナを揺るがす事態へと発展する。女王アリが持ち出され、自分にも蟻が襲ってきて、主人公が拉致され……。
果たして主人公はゴルカナを、クマリたちを、救うことが出来るのか!?
正しさは欺瞞なのか。優しさは偽善なのか。負の感情は悪なのか。
「運命とは、自分の意志が注ぎ込まれて動き出すものだ」という主人公の言葉に胸を突かれました。
是非、御一読下さい!
またあの夢だ。人が登れないような高い山と鏡のような湖、そして赤い服の少女――。
ヒマラヤ〈雪の家〉にある国・ゴルカナ。
幼き頃、龍神に舞を認められ、潮満玉と潮干玉を授けられた葵は、大学二年生になりゴルカナへ訪れる。
訪れた村では、ちょうど〈クマリジャトラ〉という、クマリが行なう祭りが明後日に控えていた。
ゴルカナでは隣国ネパールと同じく、「クマリ」と呼ばれる三歳程度の幼女が選ばれ、初潮を迎えるまで任に着く。
旅人の葵は「一日神様」として、その祭りに参加することになった。
しかし、葵が選ばれた本当の理由は、潮満玉と潮干玉を持つことだった。
秘匿されていたクマリの仕事。
その内容は、負の感情に巣食う〈アリ〉を駆除すること。
まだ幼いクマリとともに、葵は一日神様として仕事をしていくが……。
平和を望む国のシステム。そのシステムを成立させるために、性や生を道具にされ、楽や笑みを禁じられ、名前すら切り捨てられたモノたち。
超越した力にすがる弱者。超越する故に孤立していく強者。
その仕事を通して彼女は、この国の社会の歪みに直面していく。
現代に通じる神話ファンタジー、絶対にお勧めします‼