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こここここここここーんっ…! (超速ドアノック)
ばたーんっ…! (劇画調のドアオープン)
はいっ、もうお分かりですね。
「なんなんですか〜、ゼロさん〜っ。この記事は〜っ…」
あらたな《ゴン読む》の収録日。またも楽屋に乗り込んで来たかと思えば、まるでご老公の印籠。卓の向かいに座るや空が、私に向かって手中のスマートフォンをかざしてみせました。
ええ、その画面には例の記事が、はっきりくっきりと。
「あー、それね。あのね空…それは、そのリチャードさんの誤解であって…」
だが、まったく聞く耳持たず。きょうもまた、ぐいと乗り出してくる色白美形。
「ゼロさんが私と付き合えないのは、実はこのラブドールがいるからなんですね〜っ」
あいや、んな訳あるかい。いかな私といえど、まだ(?)
「んだから、誤解だと言っておるだろーに。そもそも、それは私の叔父から一方的に送られて来た人形であって、あーたらこーたら…」
テレビスタジオの楽屋で、しかも娘ほど歳の離れた女性アイドルに、なにやら説明せざるを得ぬ私。
しっかし、空まで思いっきり言ってるわな。『ラブドール』とかって。
「…じゃあ、この人形は奥さんでも何でもないんですね〜」
「う、うん。もちろんさ」
こくりと頷く私…って、そりゃそーでしょ。フツー。
「なら、私と付き合うことも出来ますね〜」
と、ようやく私から離れるや、ノーマルポジションへ。打って変わって空が、その目元口元に愛らしい微笑を浮かべた。
「あいや、その件については、この前もお伝えしましたように…」
「ああ〜、あの『こんなオッサン』の話でしょ〜? んなの構いません〜。それでも、ウチのパパよりは年下ですしね〜」
んな、パパを基準にするな。まったく。
う〜ん、どないしょ。
やっぱり本気。ご覧の通りお聞きの通り、空に引き下がる気配はない。
うむ、そうだな。ここは、いよいよハッキリと断るしかなさそうだな。
君とは付き合えない、と。理由は、あえて言わずもがな、である。
が…それによって、ハムスターやマンボウのように(?)デリケートな、この空の乙女心を傷つけてしまわないだろうか。
たとえば、その失恋のショックでもって《ゴンダ》を卒業の後、タレントに転向するも、いつの間にか消えていたと思ったら、いかがわしいお仕事に携わっていた、とか…
うぬぬ、そんな…どないしょ。
んっ…卒業? そうだ。よっしゃ、こうなったら…
「分かった、空。ならば付き合おうじゃないか」
「えっ…」
その私を見つめる空の目に、ふとキラキラとしたものが宿った。
うん、大丈夫。私には、起死回生の逆転兵器があるからな。
「ただし、それならグループを
そう、これだ。アイドルとして、いまが一番イイ時に他ならぬ空だけに、よもや『うん』とは言えまい。勝ちぃ〜っ。
どっこい、
「分かりました〜。では卒業します〜」
「ええっ…!?」
ずがががががーんっ…!!! (天燈鬼約1万体分の衝撃)
予想外も外な返答。おまけに、あっさりと真顔で言ってのけたぞ。空ときたら。
な、なんてこった、マズいぞこりゃっ。
ドールがウチにやってきた! ナナミン・ビューティー(七七七@男姉) @138148
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