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 その後、実は同い年であることや、読書等の趣味が似ていたことなどから、すっかり意気投合。やがて、居間にて私と談笑の後、リチャード氏は満足げに帰っていった。


 ふ〜っ…よかった。


 たとえば、宅を案内中に、そのリッ・・ちゃんが豹変。にわかに強盗か何かと化す、とか思って密かに警戒していたんだが…うん、結局なにも起こらなかったな。


 となると、いまは再び上座に置いたヒミコの先の移動は、あのリッちゃんとは無縁な、また別の出来事に対する警告だったのであろうか。


 ううん、そうではなかったようだ。


 で、それは約2週間後の事である。


 きょうも暇…あいや、とにかく居間の卓でノートパソコン開いて、なにげにネットニュース等をチェック。すると、そのうち私は、とんでもない記事を見つけてしまった。


「『ハレウッド俳優リチャード・マイケル・フィリップス。自身所有のラ〇ドールと結婚』だと…!?」


 これが驚かずにいられようか。


 なんたって、その記事に添付された画像ときたら、あのリチャード氏に他ならぬ人物が、一体のグラマラスなラ〇ドールと、笑顔で寄り添っている写真だったのだからな。 


「いやはや、あのリチャード氏がハレウッド俳優だっただけでも驚きなのに、さらにラ〇ドールと結婚とは…」


 どうりで、ヒミコのことを《奥様》だなんて…うん、やっぱり感覚が常人とズレてるんだな、彼は。ちょっと。凄く。 


 お、まだ続きがあるのか。


「えー、『先日、日本を旅行した際、同じくラ〇ドールを妻にしている芸人、ユウイチロウ・クスノキ氏の姿を見て、背中を押され結婚を決意…』って、妻にしてないし、押してなーいっ…!」


 おまけに、このもうひとつの『クスノキ氏と奥様と』なる見出しの画像…あの日の帰り際に、記念撮影とかってリチャード氏が、自身と私とヒミコの3人(?)で撮った写真やないけっ。


「むっ、《写真掲載クスノキ氏本人に許可済み》だと? 一体いつ私が…」

 

 あっ、きっとそうだ。特に、その写真撮影前後のリチャード氏の片言・・が良く聞き取れなかったにも、適当に相槌を打ってしまっていたせいだろう。知らずのうちに私は、その掲載の許可を彼に出していたに違いない。とほほ…


 うん、どうやら、これぞヒミコの警告だったようだ。


 いんや、まいったな、こりゃ。


 だが、実はこれで終わりではなかった。

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