小説ワード登録用小説《エトセトラ》

あさひ

第1話 エトセトラ

朝日が差し込む

これは日常的にあること

冷え切った空も暖かい気温に目を覚ます。

「未知数のその先へ僕は行くよ……」

漫画で読んだセリフをイメージの声質で演じていた

少年はまっすぐ大空を見つめていた。

「じゃあ私は後ろから付いていくね~」

そっと覗き込んでいた少女は後ろでふむふむと

相打ちと共にずっと見ていたのを

気が付かなかったのである。

「いつから見てたの? てか気配ぐらいは教えてよ……」

「私は! 天空の王子っ! そし……」

からかいながらも再現度の高いモノマネに

顔を茹で上がらせて必死に口を塞ぐ。

狙っていたのか少女はペロッと手の平を舐めては

少し興奮したかのようにほくそ笑む。

「うっ……」

嫌そうな顔を見て一気に不安になっていく少女は

申し訳なさそうに笑みを消しながら

徐々に涙を含んだ瞳を向けてきた。

「ごめんね…… 汗の味が好きなの!」

「謝る気ある?」

その言葉を待っていたのか

ぞわっとするような恍惚の表情で

ニマニマしだす少女は続け様に言い放つ。

「お仕置きが欲しいなぁ……」

「ひぃっ…… あっ! でもお腹空いたから

近くでココアとホットドック買ってきてくれる?」

「えぇ? ここは《ゲヘッ! こんな美少女をどう食べようかなぁ?》でしょぉ~」

「意味不明なんだけど」

「あれぇ~っ! いいのかなぁ?」

痛いところを突かれたと顔が歪む

彼女は舞台演出を担当できる唯一の裏方で

はっきり言うと部員が少ない中で

そこを使われるとぐうの音も出ない。

「でも今なら先生が直々に調整可能だった」

不意に思い出す優しい聖母の笑み

それは悪魔にとっては絶望の浄化そのものらしく。

立場をひっくり返す。

「まさか…… 神成かみなり先生にバラすつもり?」

「そうなるね」

「うおっ! 私の体目当てだったのね!」

前のめりに来る美少女が変態でなければ

恋に落ちただろうに

もったいないなと言う感想が頭に流れた頃には

チャイムが響いた。

「変態だと嫌われるよ? お姉ちゃん……」

「え? 待って? ふーちゃん?」

ぷいっと屋上から階段を下りていく少年を追う少女

青い空は今日も清々しい。

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小説ワード登録用小説《エトセトラ》 あさひ @osakabehime

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