このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(166文字)
東京は、容赦がない。上京した誰かに、振り向き、尊び、癒すなんてことはしない。圧倒的な物量と速度と無機質なペースで、全てが迫り、通りすぎていく。だから東京に住むひとには、優しい追憶が必要だ。一見冷たく突き放すようでいて、その奥に感じる柔らかいつながりが必要だ。例えば、母の。例えば、母との追憶の中にある、暖かい『何か』の。東京に暮らし、どこか辟易して、どこか方向性を見失って、途方に暮れる直前のあなたに、読んで欲しい作品。