第20話 ダイアナさんに

2階に上がり応接間へと戻ると、アリアは用意していた紅茶やお菓子を手に持ち、

1階へ降りる準備をした。


「じゃあ僕達はココで…」

「また練習しますわよ~」


イザベルとジェシーは昨日と同じように2階で自身らの部屋へと帰っていった。

蓮とシャーロット・朝陽とアリア・ダイアナと共に1階に降りる。


アリアは先に別れを告げて、騒がしくなった1階のキッチンに紅茶とお菓子を

片付けに行った。蓮とシャーロットが先に靴を履く。そして立ち上がった

タイミングで、


「あ、あのっ…!」


声が聞こえ振り向くと、先程降りた階段に朝陽の双子の妹がいた。

手には、紙袋と靴を持っている。


(…?)

「これ、ダイアナさんに…」


昼望があわてて紙袋を渡し、中を見るように促してきたので、ガサ、と

小さく紙袋を開けて見る。中にはおそらく数枚、服が入っていた。


靴下も一緒に入っている。伽宮夜は靴を渡してきた。

薄い灰色のパンプス。良い色だ。

昼望と伽宮夜に頷いて、玄関で待つダイアナの元へ行く。


「遅い」

(ごめん…これ、昼望さんと伽宮夜さんから。)


そうやってダイアナに紙袋と靴を渡す。ダイアナは靴と紙袋の中身を見ると、

僅かに目を見開き、


「…私に?」


そう聞いて来た。しっかり頷いて、ダイアナ宛、ということを伝える。


「ありがとう」


そう言った言葉は自分の後ろに向けられていた。ダイアナが言った時の目線を辿って

振り返ると、後ろでは階段の踊り場で昼望と伽宮夜がわー!と喜んでいた。

…バイト、やっぱ始めた方が良いかもしれない。


「じゃあそろそろお別れだね!」


玄関のドアから庭に出て、朝陽が軽くスキップしながらそう言った。


「…また明日、か?」

「ううん、次は土曜日かな。」

「土曜日?…もしかして。」


土曜日、と聞いて少し眉をひそめた蓮。土曜日に何かあるのだろうか。


「明日は水曜日でしょ?そこから木、金…。金曜の夜までお出かけなんだー」

「お出かけって…また仕事に着いていくのか?」

「朝陽さんのご両親、ご多忙ですからね♪」


朝陽と蓮は大金持ちだ。両親の仕事に着いていくことは、そう考えると

あまり不思議ではない。


「文字化現象でそんな場合ではないのに…」

「周りは気付いていませんからね。やむをえません。」


難しい顔をして考えながらあるく蓮に、転びますよ、と笑うシャーロットは

心配しているのか、からかっているのか。


「アリアに昼望と伽宮夜は任せるけど…一応、弓道場は僕が

帰ってきてからの方が良いってアリアが」


綴リビトって言葉のカウンセラー…らしいけど、逆に保護者の役割もありそう。

まぁ、シャーロットとアリアだけかもだけど。イザベルとジョシュアに既視感が…


てってって、とリズムをとり、アホ毛を揺らしながら朝陽は先に門へと行き、

開けてくれた。軽くお辞儀して門をくぐる。…蓮はそのまま通って行ったけれど。


「ごめんねー、じゃあまた土曜日!土曜日は何もないよね?!大丈夫だよね!」

「大丈夫だ」


朝陽に伝わるように頷くリアクションをする。


「じゃあ9時ね!朝!午前!!」

「わかった。…そして叫ぶな。距離は遠くないぞ。門の外と内だ。」

「うー…」

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言ノ葉綴リビト 月出 四季 @autumnandfall

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