楽 距離4/4
あの日から 今日で499日がたちました
僕は499日も生き永らえてしまいました
僕の心とは裏腹に 身体は至って健康で
刻まれたリズムで朝起きて 夜には眠る
君を思い出す時間も 少なくなりました
毎晩泣いていた あの頃より 僕は強く
そして 非情になったのだと 思います
僕に君の気持ちなど わかるはずもなく
「泣かないで」とか 「笑ってて」とか
エゴで組み上げた 妄想の言葉を並べて
それらしく 残された者として 生きて
耐えられず現実逃避はたくさんしていました
幸せだけを選んで過ごした日々もありました
そういうときの視界は、厳重なフィルターで
どんな粗もどんな世界の悲しみもうまいこと
隠してしまえるのだから器用な生きものです
けれど現実は僕から逃避してくれる筈もなく
君のいない日常は次第にさも当然かのように
僕の身体に容赦なく 染みついていきました
僕が孤独に毒されてから 今日で 499日です
明日でついに500日を迎えます
僕は明日 君を忘れるでしょう
身体に染み付いた毒が心を蝕むのは一瞬だ
だから 僕が僕でいられるうちに眠りたい
499日も生きたのだから君に褒められたい
それが 幸福か不幸かはわからないけれど
今日の僕に残された最期の力で 思い出す
そのすべてをここに記しておこうとおもう
中身は 僕と君だけが わかればいいんだ
あの熱を あの声を あの汗を あの時間を
あの空を あの水を あの光を あの約束を
あの席を あの闇を あの間を あの空間を
君といたすべてが 喜びそのものだった
君といたすべてが 怒りに支配されてた
君といたすべてが 哀しみに満ちていた
君といたすべてが ああ 楽しかったよ
幸せだった 僕の人生は 君のおかげで
とても豊かで ひたすらに 幸せだった
僕はこの日記を 抱きしめて君のもとへ
月に沈んでいく 月光が僕の毒を解かす
499日目の 太陽が沈む
500日目の 月が満ちる
”Four on the Floor“ Fin.
Four on the Floor 伊月 杏 @izuki916
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