第54話 2章序章_麗華参戦2

 麗華さんが、火属性の軍勢を全滅させた……。

 これは、サクラさんが協力してくれているので確定事項だ。


 飛んでいた麗華さんが下りて来た。


「……なんか、すっごい神々しいですね」


 祖母の武器防具を着こなしている感じだ。


『麗華さん! 周囲の炎を消してください!』


 ここで、サクラさんが、割り込んで来た。

 でも、確かに消火は、最優先事項かもしれない。

 最悪、このログハウスの場所が、色々な種族にバレる可能性もある。


「……」


 麗華さんが、扇を振ると、周囲の炎が消えましたよ……。どんだけ、魔導具を使いこなしているんだか。

 僕以上なのは、確かだな。


「麗華さん、確認事項があります。ステータスに関してです!」


 まずは、最優先事項だ。

 最悪、今後の人生に大きなデメリットが発生する可能性がある。


「……ステータスが、どうかしたのですか?」


「全ての項目で75%以上にはしないで欲しかったのですが、今はどうなっていますか?」


 麗華さんが、考え出す……。暫くの沈黙。


「え~とですね。魔力に、全振りしました」


 ごふ……。


『サクラさん、大丈夫なんでしょうか?』


『現実世界に戻った時に、魔導具を持って帰らなければ、発揮はできないと思いますが……。優未さんは、薬学に使っていました。体への影響は未知数です……』


 すっごい、危機的状況かもしれない。

 ノーベル賞とか取ってしまうかもしれない……。


「ちなみに、数値はいくつですか?」


「999+%ですね。これ、バクっていますね。なんで、パーセント表示で100を超えるのか」


 これ、レオンさんより強いんじゃないかな?

 根源や巫女より強い存在を、連れて来てしまったのかもしれない……。


「優莉さん! 今しかありません。火属性の巫女を倒したのですし、麗華さんを火属性の根源まで連れて行きましょう。麗華さんに火属性の巫女になって貰えば、この世界の問題の大半が片付きます!」


 アンネリーゼさんを見る。

 火属性の根源が認めるかどうかという、問題があると思うんだけど……。

 力でねじ伏せられるのかな?


「質問は、以上ですか? 私からも質問があるのですが……」


 また、麗華さんを見る。

 ちょっとどころか、結構怒っているな。


「まず、随分と背が伸びていますね? かなりマッチョですし? そこから説明をお願いします」


 その後、この異世界について説明を行った。





「複数の知的生命体が共存する世界だと……。その混乱を治めるために優莉さんは働いていたのですね……」


 麗華さんは、笑顔で青筋を立てているよ。器用だな~。流石、大企業の令嬢だ。


「申し訳ないのですが、ご協力をお願いしたいです……」


 ダメ元で言ってみる。


「まあ、いいでしょう。た・だ・し、条件があります」


 冷汗が止まらない。


「なんでしょうか。聞ける範囲であれば、叶えたいです」


 怖い笑顔の麗華さん……。


「この世界で、優莉さんにお弁当を作った人物がいるのですよね。その人物に会わせてください。危害を加えないと約束します」


 脱水症状が起きそうなほどの汗が出た。お腹も痛い。トイレ行きたいです。


「ユーリさん。逃げられませんよ?」


 アンネリーゼさんを見る。


『つけがここで、回って来ましたね。モテる男はつらいですね~』


 サクラさん……。あなたの声は、麗華さんとアンネリーゼさんにも聞こえているんですよ。

 麗華さんを見る。

 絶対に引かないと言った、表情だ……。


 僕は、ここまでかもしれない。





 麗華さんもアンネリーゼさんも、〈天女の羽衣〉を装備しているので飛べる。そのまま、レオンさんのメルク連邦まで一飛びだ。

 僕は、胃が痛い……。

 もうすぐ、メルク連邦が見えて来る、そんな距離だった。


「……今日は、レオンさんが来てくれるみたいですね。ここで、待ちましょう」


 前回みたいに、気配を消したりはしてない。レオンさんの方からも飛んで来てくれていた。互いの姿を確認して落ち合う。

 現状の危険性を理解してくれているみたいだ。

 遠目に見えると、モニカさんとシノンさんがペガサスに乗っているのも見えた。


「ユーリ。今回は、ここで話し合おう。その者をメルク連邦に入れる訳にはいかないんだ……。皆、怯えている」


 ん? なんかあるのかな?


『五行思想ですよ。火は金属を溶かすんです。レオンさんでは、麗華さんに勝てないんですよ……』


 サクラさんが、解説してくれた。


「そうなると、水の霊王?」


『あんな腑抜けに、なにが出来ると思っているのですか?』


 異世界の状況は、本日をもってバランスが崩れたんだな~。(棒)

 その後、地面に降りて、倒木を椅子にして、簡単な会談場所を作った。

 モニカさんとシノンさんが、お茶とお菓子を用意してくれる。


 お茶を一口飲む。


「……それで、何の用で来たんだ? 見てたんだけど、火属性の根源に攻め込むのだと思っていたんだが?」


 麗華さんが、質問する。


「優莉さんに、お弁当を作った人物に会いに来ました」


 ――シーン


 ここで、モニカさんが口を開いた。


「私ですが、なにか?」


 麗華さんが、モニカさんの前に詰め寄る。だけど、モニカさんも引かない……。


「今は、作られていないのですよね?」


「……ログハウスに住まわせてくれるのであれば、ユーリさんのお世話は、私がしたいと思います! アンネリーゼ様では、生活能力が皆無ですしね!」


 もうね、脱水症状で倒れそうです。

 暫くの沈黙……。互いに視線を外さない。


「分かりました。優莉さんが、どんな生活をしているかが分かった気がします」


 これ、麗華さんが折れたのかな……。

 良かった、誤解は解けたようだ。


『……おめでたい人ですね』


 サクラさんは、無視する。


「そ、それでは、火属性の根源に攻め込みましょう!」


「あ、ユーリさんとアンネリーゼ様。お弁当を作って来たので持って行ってください」


 ――ピキ


 周囲の雰囲気が変わった……。

 モニカさん……、空気を読んでよ。だけど、強い意志の篭った瞳で僕を見ている。

 受け取らない選択肢がなかったので、受け取って出発することにした。ちなみに、麗華さんは何も言わない。今は、食材もないしね。

 それと、レオンさんから、小声で言われた。


「その、レイカ? をメルク連邦に連れて来ないでくれよ? 癇癪の一つで都市が壊滅するのは避けたいんだ」


 僕は、この世界の最大のキーマンを連れて来てしまったのかもしれない……。


「優莉さん……。仕事が終わったら、私の手料理を食べてくださいね?」


「……はい」


 一番初めの要求は、簡単だったな。徐々に難易度が高くなりそうだけど。


『尻に敷かれ始めましたね~』


 サクラさんの声は、麗華さんにも聞こえているんだけどな。


「とりあえず、火属性を片してしまいましょう。それで、この世界の大勢が決まります」


 アンネリーゼさんを見る。

 

 確かに、最大の戦力を持つ火属性の根源と協定を結べたら、後は土属性の根源だけだ。その他の隠れている根源は、小さいだろうし。


 三人で飛び立つ。

 ここで、麗華さんがモニカさんに話しかけた。


「後で、じっくりと話し合いましょうね~」


「望む所です!」


 こうして、僕たちは小用を済ませて、火属性の根源に向かった。



 これ……、正しい道なのかな?

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往復可能な異世界転移~引きこもりニート予定だったけど、祖母の遺産で忙しく働いています~ 信仙夜祭 @tomi1070

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