#48 セージのプロポーズ、キヨカの嫁入り


 キヨカと将来のことで相談した時からずっと考えてることがあって、それはキヨカに「少しでも早く結婚」と言われた言葉。


 それ聞いた直後から、ちょっとヤケ気味に『だったら18になったらすぐにでも結婚しちゃうか?』と自問し続けてて、でも冷静になって考えても、案外悪くないんじゃないの?って思い始めてる。


 当然俺もキヨカも高校生だし、住む所とかは親と同居で学費も親に頼り続けるから、世帯主って訳には行かないけど、籍だけ入れてウチにキヨカが同居するっていう形なら、可能なんじゃないの?って思えてね。



 で、ねーちゃんに相談してみた。


『ねーちゃん、相談なんだけど』


「せーくんから相談って珍しいわね」


『うん、母さんたちに相談する前にねーちゃんに意見聞こうと思って』


「ウチのことなの?」


『う~ん、そうなるかな。 ぶっちゃけ、キヨカと結婚しようと思って』


「まぁ、あなた達は結婚するでしょうね、ってまさか、直ぐに???」


『いや、流石に18歳になってからじゃないと無理』


「そういうことじゃなくて、あなた達高校生でしょ? 学校はどうするのよ」


『えーっと、籍だけ入れるとか考えてて、引き続き高校も先の大学進学も考えてるよ』


「何がしたいのかよく分からないんだけど、就職するまで待てないってことなの?」


『いやぁ、就職するまで待てないっていうよりも、待つ必要ないんじゃないかって思えちゃって。 だってさ、今でもほとんどの時間一緒に過してるんだよ? 籍入れたところで今までの生活を続けるだけだろうし、もし可能ならウチでキヨカも同居してほしいけど、キヨカの苗字が「鈴宮」から「東雲」に代わるだけって考えると、難しいことじゃないんじゃないかって思えてさ』

『そりゃ、法的な手続きとか色々な部分でそんな簡単な話じゃないとは思うけど、結婚=世帯主とかそういう固定概念無視したら、意外といけるんじゃないの?って思っちゃってね』


「う~ん・・・分からないでもないけど、高校生の間は焦る必要ないんじゃないかしら。 せめて高校卒業してからのが」


『そうかぁ、やっぱり高校生の間は早いかなぁ』


「周りの人とかでも、普通の人にはまず受け入れられないでしょうね。 それに色々邪知されるわよ。妊娠させたんじゃないか、とかね」


『そうだね、きっとそうなるだろうね。 ってことは、卒業と同時に結婚しちゃうか』


「ところで、この話はキヨカちゃんは知ってるの?」


『いや、まだ話してないよ。 キヨカがさ、早く結婚したいから進学せずに就職するって言うから、それで「だったら直ぐにでも結婚しちゃうか」って俺の方が考え始めててね』


「そうなの、キヨカちゃんも相変わらず極端ね。 思い切りがいいのか、振り切っちゃってるのか解らないけど」


『就職のことは、どっちかって言うと冷静に考えた末での結論の様だよ。言ってることとかは結構まともだったし』




 ということで、その日の内に『高校卒業したら直ぐ結婚を考えてる』と両親に相談してみた。


 俺の進学やキヨカの就職のことも話して、あくまで強行するつもりとかじゃなくて、意見というかアドバイス的な物を聞きたいっていうスタンスで。


 そしたら意外や意外で、父さんも母さんも「キヨカちゃんがウチの子になるってことなら、いいんじゃない?」ってあっさりと賛同してくれた。


 もちろん、その為の相手のご両親の了承を得ることや、当然大学へストレート合格することや進学後のビジョンをしっかり持っておくこととか、その辺りはキッチリ言われたけど。





 で、翌日キヨカに話した。



『キヨカ、ちょっと大事な話あるんだけど』


「はい、なんでしょう」


『高校卒業したら、すぐ結婚しよう』


「んん? 卒業したらですか?」


『おう、少しでも早い方がいいだろ?結婚』


「冗談で言ってるわけじゃないんですよね?」


『冗談じゃないよ。大真面目だよ。俺は大学に進むし、キヨカは就職するけど、別に入籍しててもやっていけると思ってさ』


「そうですか・・・っていうか、コレってプロポーズですよね???」


『・・・そうだね。言われてみればコレ、プロポーズだね。 ナチュラルにいつもの相談事のつもりで話してたわ』


「・・・やり直し! もっとこうロマンちっくでドラマちっくでエキゾちっくにやり直してください!」


『エー、もう言っちゃったし、やり直しても白けるだけだぞ?』


「やり直してくれないと、結婚しませんよ!!!」


『マジか』






 今俺たちが居るのは、俺の自室。

 二人でベッドを背もたれ代わりに座って喋っていた。



 俺は、一度立ち上がってからキヨカと正面から向かい合う様にして片膝を付いた。


 右手を胸に当てて、宣誓するかのようにプロポーズした。



『えー・・・鈴宮キヨカさん。 この先、生涯死ぬまで君と一緒に居たいです。 僕の傍でずっと笑っていて欲しいです。 キヨカと共に歩む人生以外考えられません。 だから僕と結婚して下さい』


 そう言って、頭を下げた。



 が、下げたまま返事を待つが、しばらく無言が続く。



 あれ?これでもダメ?って思って顔上げたら、キヨカが声出さずに号泣してた。


 ティッシュの箱取って『はい、ティッシュ』と渡すと、返事もせずに数枚毟って、ずびぃぃーって鼻かんだ。



 その間、片膝の体勢は崩さず待機。

 本当は、いつもの様に抱きしめて慰めたかったけど、プロポーズの途中だし、返事貰えるまで我慢した。 


 とは言え、キヨカが落ち着くまで時間かかりそうだから、ねーちゃんや両親には相談済で、賛同してもらってることも話した。


『母さんなんて、ウチの子になるってことならいいんじゃない?とか言ってたし、ウチの家族はみんな賛成してくれたぞ』



 そしたらキヨカが飛びつく様に抱き着いて来た。


 片膝の体勢からひっくり返る様に倒れて、キヨカと抱き合う様に寝転がった状態になる。


 キヨカがえぐえぐ泣きながら何か言ってるけど聞き取れなくて、でも空気読んで聞こえてるフリして『そうかそうか、うんうん』と相槌を返した。

 返事、聞くまでも無いしね。




 翌日キヨカのお家に挨拶に行くと、既にキヨカが全部話しちゃってて、ドラマとかでよくある『娘さんを下さい』「娘はやらん!」的な挨拶などさせて貰えずに、普通に歓迎された。








 ◇◆◇








 高校卒業式の日、俺たちは本当に入籍した。

 卒業式の後二人で高校の制服のまま、事前に用意していた記入済みの婚姻届を持って市役所に行き、晴れてキヨカは”東雲キヨカ”になった。 指輪も高い物では無いけど用意して、市役所出てからお互いの指に通した。



 俺は県内の大学に進学が決まっていて、キヨカも就職が決まっていた。


 キヨカの就職先は、いつも豆大福を買っていた和菓子屋さんだ。

 常連のキヨカのことを店主さんも良く覚えてくれていたらしく、即採用が決まったらしい。



 キヨカは、卒業式の翌日にはウチに引っ越してきた。

 部屋は俺と一緒の部屋になり、狭いけどずっと一緒に過してきたし今更不便は感じない。



 そして、キヨカがこれまで買い集めた本のコレクションが、東雲家の書庫に新たに加わることになった。


 キヨカのコレクションを棚に整理をしていると、『キヨカが本当にウチの家族になったんだなぁ』と実感が湧いて来た。


 まだ作業の途中だったけど、俺の部屋で荷物の整理をしているキヨカの所へ行き、改めて今の気持ちを伝えた。



『キヨカ、結婚してくれてありがとうな。 大好きだよ』


「き、急にどうしました!?」


『いや、本の整理してたら急に実感湧いて来て、お礼言いたくなった』


「なんか前もこんなことありましたよね・・・」


『あー、図書室で俺が告白?したときかな』


「そんなことありましたねぇ」


『キヨカあの時、鼻血噴き出してたな』



 俺が感慨深く懐かしんでいると、キヨカが優しく俺を抱きしめて来た。


「セージくん、私こそお嫁さんにしてくれて、ありがとうございます。 私も大好きだよ」


 そう言って、キスしてくれた。

 それからお互い無言で唇を貪りあい、引っ越しの片付けほったらかしで始めてしまった。

 

 キヨカは見たことのある黒のTバックを履いていた。


『あれ?この下着って』


「うふふ、そうですよ。勝負下着ですよ! 今日は東雲家の一員になるスペシャルな記念日ですからね!」













 お終い。




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幼馴染という呪縛からの解放  ~僕のが先に好きだったのに! 知らんがな~ バネ屋 @baneya0513

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