#47 その後のみんな


 ねーちゃんとユキさんの再会が上手くいって以降、ねーちゃんが目を見張る程変わった。



 まず、表情や口調がしっかりしてる。

 以前の優等生の頃みたいな自信家とはちょっと違うけど、大げさな言い方すると「責任を持った態度と言動」というのがしっくりくる。

 簡単に言うと”大人になった”ってことなんだろうけど。

 



 そして、ニートも終わりにすると宣言した。


 ねーちゃんはユキさんと会った翌日に、父さんと母さんに向かって頭を下げて、4年間引きこもって迷惑をかけたことを謝罪して、これからは働くことを約束した。



 しかし、最初は自分で職探ししようとしたけど、高校中退職歴無しはこのご時世中々厳しい様で、結局ユキさんが相談に乗ってくれて、何とか勤め先を見つけることが出来た。ユキさんのお母さんが懇意にしている洋食屋さんでアルバイトとして雇ってもらえることになった。


 仕事の内容は、調理補助で要は厨房の雑用で、慣れれば調理も覚えて行くことになるだろうとのこと。


 週5日 昼間のシフトに入るらしく、遂に年中夏休み生活から卒業となった。



 また、ねーちゃんは4年前からずっとスマホを持たずにいたけど今後はユキさんとの付き合い等で必要になるだろうと、バイト代が入ったら自分のお金でスマホ買うのが最初の目標だと言っていた。


 今後のビジョンとしては、高卒認定試験(大学進学は今のところ考えてない)やバイク免許の取得(ユキさんとツーリングに行きたい)なんかも言っていたけど、まずは仕事に慣れて収入を安定して得ることに取り組んでいくそうだ。


 本人が言うには「いつまでもいじけてないで、全うな人間らしい社会生活を送ることが、自分なりの」だそうだ。




 因みにユキさんの方だけど、しょっちゅうウチに遊びに来るようになって、今大学3年で就活の真っ最中らしいけど、本人曰く「なる様にしかならないからね」と緊張感があまり感じられなかった。


 ユキさん見てると、以前は頼れるお姉さんタイプだと思ってたけど、案外肝っ玉母ちゃんタイプかもしれない。


 ねーちゃんもキヨカも、結構細かいことに拘るタイプだけど、ユキさんに何か言われると反論せずに素直に従う感じ。





 一連のねーちゃんとユキさんの再会からの様子を見てきたキヨカが言うには、

「もしかしたら、4年の月日を空けたからこそ二人は上手く仲直り出来たのかもしれない」だそうだ。


 事件直後やねーちゃんが引きこもってた時期だったら、お互い感情的になったりうつ状態だったりで、確かにまともな話し合いなんて出来なかっただろう。


 逆に年数を開けすぎてたら、お互いの溝が深くなったり、友人に対する思いも薄れたりで、本音を隠したり建前を優先してたのかもしれない。


 ねーちゃんもユキさんも、キヨカのその意見には「流石キヨカちゃんね。 きっとその通りよ」と同意していた。







 そして俺は、俺とキヨカの二人の将来のことを考えるようになっていた。

 まぁぶっちゃけ、社会復帰を始めたねーちゃんに触発されてなんだけどね。


 今更言うまでも無く、キヨカとは結婚することになるだろう。

 ウチに嫁に来る気満々だし、既に外堀も完全に埋まって逃げ道も無い状態だし。


 しかし、逃げる気は無いとは言え、付き合って精々半年だぜ?

 彼氏の家族に溶け込んで誰にも反対されることなく将来結婚することを既定事項にしちゃうなんて、恐ろしい子だよ、マジで。


 で、結婚を前提として考えると、当然将来の職業などのビジョンを考えないといけない。

 今高校生の俺は、まずは大学進学。


 なるべく地元で家から通えるところが良いだろう。

 幸い、県内には他県に比べ大学の数が比較的多く、選択肢は広い。


 一番の理想は、キヨカと同じ大学に進学。

 最低限、お互い地元の大学。

 遠距離恋愛は、俺自身はダメだと思ってる。




 ということで、キヨカと相談することにした。



『キヨカさんや、ちょっと真面目な相談があるんだけど』


「うん、なになに?」


『進学のこと。 俺地元の大学志望にするつもりだけど、キヨカはどうする?』


「あー、私は進学しませんよ」


『え?ええ? ちょっと待って、どゆこと?』


「高校出たら、働こうって思ってるんです」


『そうなの??? てっきり進学だと思ってたけど・・・理由聞いてもいい?』


「う~ん、一言で言えば、セージくんと早く結婚する為ですね!」


『は? 結婚するのに就職なの?』


「そうですそうです。 結婚資金貯めるっていうのもそうだし、結婚決めてるのに大学行って勉強しても、結婚したらその学歴活かす機会って少なそうじゃないですか。 はっきり言って、結婚前提に考えると大学ってお金も時間も無駄遣いって思うんですよね」


『まぁ、そう言われるとそうなんだけど、キヨカはそれでホントにいいの?』


「むしろ自分がそうしたいって思ってるんですから、良いも悪いもありませんよ」


『そっか・・・』


「ま、私の代わりにセージくんが大学でしっかり勉強頑張って、就職したらしっかり稼いでもらいますからね!」


『おぅ、頑張るよ・・・』


「なんですかもう! 元気ないですねぇ」


『いや、なんか俺と結婚する為に進学しないとか18歳で働くとか、申し訳ないなって思って』


「だーかーら! 自分がそうしたいんです! それに18歳で働いてる人なんて、世の中、山ほど居ますよ!」


『そうなんだけどさぁ』


「責任を感じるのなら、少しでも早く結婚出来るように頑張って下さい!」


『おぅ、分かったよ』




 俺たち、高2だよな?

 なんで結婚のこと今からこんなに真面目に考えてるんだろ。






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