#46 仲直りのお汁粉



 台所に行くと、相変わらずセージくんは読書をしていた。


『お? 戻って来るの早いな』


「うん、休憩することになったからお汁粉の用意するよ」


『なるほど、手伝うことある?』


「ううん、大丈夫だよ」



 大福を4つ取り出し、お汁粉の鍋に1つづつそっと入れる。


 鍋はまだ熱が残っていたので、弱火で少しだけ温め、大福が柔らかくなったのを確認してから、4人分をそれぞれお椀によそう。


 冷蔵庫にタクワンがあったので、それもカットしてお皿に盛り付け、お口直し用に一緒に用意した。


「セージくんも一緒に食べますか?」


『うん、そうだね。 どんな状況か気になるし、一緒に食べるよ』


「了解です。では一緒に戻りましょう」




 お盆に4人分のお汁粉とスプーン、それとタクワンを乗せてセージくんに運んでもらう。


 ノックしてから扉を開けて


「お待たせしました。 甘い物用意したんで休憩にしましょう」


「この匂いはお汁粉? いいねぇ、流石キヨカちゃん♪」


「もう!おだてるのは止めてくださいよ!」


「うふふふ」


『なんかいい雰囲気ですね。 話し合いは上手くいってるんですか?』


 セージくんがお汁粉をみんなに配りながら、質問した。


「そうだねぇ、殴り合いの末に熱い友情が再熱したってところかな?」


「うふふ、そうね。キヨカちゃんのお陰で、なんとか意見もまとまったしね」


『へぇ、キヨカが?』


「だから、わたしのことはいいんです! それよりも、お汁粉召し上がって下さい! なんと!白玉の代わりに大福饅頭が入ったお汁粉ですよ! 超ド級スペシャルお汁粉です!」


「え!? お汁粉に大福!?」


「まさか本当に作っちゃったの???」


「はい! お二人が仲直りした記念に何か用意したくて、記念って言ったらスペシャルなコレかな?と」



 セツナさんとユキさんは「頂きます」と言ってから食べ始めた。


 私とセージくんがその様子を見ていると


「何と言うか、スペシャルなのは違いないね」


「ええ、一言で言うと、アンコね」


『俺たちも食べようか』


「はい!」



 セージくんは黙って食べていたけど、微妙な表情をしていた。

 私は「大福が大きすぎる? あ、でも大福を半分にしてから食べると、中のアンコとお汁粉が混ざりあって・・・」と色々吟味しながら食べた。


「ふぅ~ ごちそうさまでした。 これ食べるとしばらくはお汁粉はいい(要らない)わね」


「そうね。間違いなく太りそうだし」


『え? まだ鍋に沢山残ってるよ? 大福もあと6個あったし、お代わりして貰わないと困るんだけど』


「まじ?」


『はい、マジっす』


「じゃあ、お父様とお母様にも食べて貰いましょう!」


『父さんは今夜は帰ってこないぞ。 母さんなら午後には帰って来るかな』



 やんややんやとお汁粉をどうするか相談しているとセツナさんが


「そうだ、ユキちゃんに今夜泊っていってもらうことになったんだけど、キヨカちゃんもどうかしら?」


「え!?お泊りですか???」


「そうそう、まぁ私たちは4年分の積もる話もあるからね。 それにキヨカちゃんとも仲良くなりたいと思ってね、「キヨカちゃんも誘って」って私からセツナちゃんにお願いしたの」


『折角だから泊っていったら? キヨカの親御さんにはウチからちゃんと連絡するし』


「じゃぁ折角のお誘いなので。 うふふ、今夜はセージくんのお部屋で熱い夜になるんですね?冬なのに♡」


『いや流石に俺の部屋で寝るのはダメだろ』


「ええええええ!?」


「キヨカちゃんって面白い子なんだね」


「ええそうよ。ギャップが凄いのよ」




 お汁粉は、夜にセツナさんとユキさんがもう1杯づつお代わりしてくれた。

 セージくんはお代わり無理だった。

 普段クールなお母様は、なぜか爆笑しながら2杯食べてくれた。

 私は2杯お代わり(計3杯)食べたところで、レフリーストップがかかった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る