私が以前聞いた言葉で「男はかつてのエルサレム」というものがあり、それがとてもしっくりきます。たとえ男尊女卑の文化で育った人が減っても、たとえ女性が社会進出をどんどん進めても、LGBTが普及しても、エルサレムだった過去を持つ男にとっては価値観を変えることはとても難しいというようなことでした。
私はXジェンダーの人間ですからこの主人公とは逆で女性になりゆく自分が疎ましく思ったものですが、成長してしまったものは仕方ないと諦めています。たとえ身体が老化しても、あからさまな性差をかもそうとも、「今の自分が最も可愛い/かっこいい/素敵」だと思える行動や格好をします。それは社会というよりも自分のDNAに抗うような作業でもありますが、自分が最も愛せる自分であることが私にとってとても大切です。
この作品は時代背景もありますが、現実でも田舎の方の地域や男尊女卑が強く根深く残る地域では当たり前に聞く話でもあります。
在り方に悩む人に是非読んで欲しい作品です。
LGBTというテーマはセンシティブで、小説として公開するものとして選択するのは、非常に勇気が必要だったと思う。
まだ第一話。
しかし、作者がこのテーマに真摯に向き合おうという姿勢が感じられる。
さらに、表現が面白い。
特にこの表現は私の胸に響いた。
「得体の分からないものを踏むことで自分が男から女へと変われるかもしれないと思っていたのだ。」
子供の頃、私だって得体の知れないものを踏んづけた。
たぶん、ほとんどの人が踏んづけた。
私はこの表現を読んで思った。
「これは他人事じゃない。私の物語だ」
まだ連載中とのこと。
このまま、この素晴らしい一作を完成させてもらいたい。