第7話 面談③
「先生、失礼します。うわっ…」
「入って早々なんだ」
「掃除してください。入るのを躊躇するレベルです」
「しょうがねえだろ。俺の生活スペースなんだから。とやかく言うな」
「最低限の清潔さを保ってたら何にも言わないです」
「お前は俺のおかんか、小言ばかり言ってたら老けるぞ」
「…お気遣いありがとうございます。その優しさに甘えて他にもいくつか聞いてもらえます?」
「なんだその前振り、聞きたくなくなるなあ」
「大切な話です」
「…なんだ?」
「先生のおかげで去年よりも学校に来るのが楽しくなりました。去年の春が一番ひどい時期でしたから」
「俺は何にも出来てないんだけどな」
「損な性格してますね」
「はぁ?」
「少なくとも私は良くなったと思っていますよ。教師の目があるって思われただけでも抑止力になりますから」
「………」
「でも、やっぱり本人の中で恐れが消えてないみたいで、隠しているんだと思うんですけど、その………」
「お前も優しいな」
「なんですか、急に」
「どうして自分のことを二の次にして、他者のことばっか考えるやつの多いクラスになっちまったんだ。反面教師ってやつか、俺が自分を第一に考えて行動するからそうなっちまうのか、ガキのくせに大人ぶりやがって」
「先生、私は真剣に…」
「他者との関係を悩むのはいいが、相手を心配して悩み続けるのはやめとけ。同級生だから解決する問題ももちろんがあるが、これに関しては違う」
「それは…」
「それどころか、変に関わるとアイツ自身が一番嫌かもしれない。友達だからこそ知られたくないことはあるもんだ。だからこそお前らに知られないように隠してるのかもしれない。それを暴き立てるのは、お前も本意じゃないだろう」
「…ごめんなさい」
「いや、悪い。言い方がきつくなった。要は心配しすぎるなってことだ。あいつの問題は必ず解決させる。だからお前はもっと自分のことを考えろってこった」
「分かりました。私じゃ力不足ってことですね」
「なんでそう捻くれた捉え方するんだ」
「ふふっ、冗談です」
「それでお前自身の悩みとあるか?」
「あんまり考えたことなかったですね。見つけていきます」
「今はないってことか」
「そうですね」
「じゃあ終了だ、次は秋峰を呼んできてくれ」
「坂本ではなく?」
「あいつは長くなるかもしれないからな」
「そうですか」
「なんかあいつが文句言ってくるかもしれんから、適当に誤魔化しててくれ」
「最後に面倒なことを…。分かりました、お願いします」
「おう」
欠けたラストピース @Rainpul
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