第6話 面談②
「失礼します」
「正直、お前と話すことはないんだよな」
「なんですか、入室早々」
「思い付きで始めちまったから、話したかった奴と別にそうでもない奴がいるんだよ。お前は後者」
「そう言われた僕はどうしろと…」
「あえて挙げるならお前の完璧さは俺を悩ませてるから、どうにかしろ」
「僕のどこが完璧なんですか。藍には一度もテストで勝ったことないし、運動だって恭弥や瑞樹には劣るんですが」
「そういうのじゃねえんだよな」
「じゃあ、なんですか?」
「変な奴らをしっかりまとめる感じ」
「自分の生徒を変な奴らでくくらないでくださいよ。それにあいつら俺なんかで収まる奴らじゃないですよ…」
「それでもお前の見える範囲で世話してやってるだろ」
「どうなんですかね…」
「そういう意味ではお前の方が担任に向いてるんだよな。俺の代わりにやってみるか」
「教育委員会に報告しますよ」
「冗談が通じねえな」
「先生の場合は本当にしかねないので釘を刺しときます」
「それも込みで冗談が通じないんだよ」
「なんですかそれ」
「逆にお前から俺に言っておきたいこととかあるか?」
「言えば直してもらえるんですか…」
「検討はしてやるさ」
「ですよね…」
「で、何かあるか?」
「ありませんね」
「いや、検討は冗談だとして要望みたいなのはないのか」
「あえて言うなら、掃除はもう少し綺麗にした方がいいですよ。色々見えちゃいますから。サボってる様に見せたいならなおさらですね」
「妙に鋭いところはどこで手に入れたんだ?俺はそんな風に育てた覚えはないぞ」
「先生が下手すぎなんですよ」
「はあ、わかったよ。今度からは徹夜の痕跡とかは残さないようにするさ」
「なので僕からのお願いは特にないです。生徒思いの先生がいるおかげで楽しく学校生活送れてますから」
「ほう、ぜひ会ってみたいな、そんな苦労人に」
「顔でも洗ってきたらどうですか?会えるかもしれませんよ」
「むさ苦しいおっさんが写るだけだ。分かった、じゃあお前の面談終わり。次は奥を呼んできてくれ」
「はい、失礼しました」
「…はぁはぁ、失礼します」
「お前ら本当に教室で何やってんだ?」
「…何でもないです」
「お前もクラスに染まったってことか」
「?」
「まぁお前はちゃんと道を持ってるし、少し寄り道するくらいがちょうどいいいかもしれんな」
「…どういうことですか?」
「ただの独り言だよ。それで最近どうだ?」
「…特に何も」
「教師になりたいって夢は変わってないのか?」
「…なりたいです」
「自分で言うのもなんだが、よく俺を見て教師になりたいって思えたよな」
「…憧れですから」
「お前は俺が恥ずかしくなること平然と言うなぁ」
「…そうですか?」
「自覚ないのか…」
「…すいません」
「いや、まぁそんなに強い夢なら問題ないだろう。俺も幻滅されないように頑張らないとな」
「…そのままで大丈夫です」
「嬉しいこと言ってくれるな。俺に言っておきたいこととかないか?」
「…ないです」
「分かった。じゃあお前も面談終了だ。那智田呼んできてくれるか」
「…はい」
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