第5話 面談①

「お邪魔するっす」

「まだ布団すら片付けてないぞ」

「うわー、相変わらず汚いっすね」

「まあいい、適当に座れ」

「了解っす」

「何なら掃除の片づけを手伝ってくれてもいいぞ」

「いやっす」

「そうかい、それで最近どうだ?」

「楽しいっすよ、毎日。勉強は嫌っすけど、やっぱり体動かすのは最高っす」

「相変わらずだなお前は。勉強だってお前はもっとできるやつだと俺は思ってるんだがな」

「えへへ~照れるっすね」

「問題はやる気の継続だな」

「そうなんすよね」

「気付いてるなら直せ」

「無理っす」

「はぁ、まあ楽しんでるならいい。三年生になってからお前は少し静かになったと思っていたからな」

「…ウチっすか?」

「あくまで今までと比べてだがな、杞憂だったか?」

「どうっすかね。ウチはウチだから分かんないっす」

「悩みでもあるなら聞いてやろうかと思ったが、お前自身が大丈夫ならそれでいいさ」

「意外と見てるんすね」

「担任だからな、嫌でも目に入る」

「…ふーん」

「なんだぁ、その目は」

「いつもジロジロ見られてるなんて、身に危険を感じるっす」

「はいはい、そうだな。じゃあ面談は終わりだ」

「もういいんすか?」

「思い付きで始めただけだからな、それともまだ話し足りないか?」

「いや、大丈夫っす」

「じゃあ次は向井を呼んできてくれ」

「了解っす」




「…失礼します」

「おう、適当に…、顔どうした?真っ赤だぞ」

「…あはは、今日少し暑いですね」

「お前ら教室で何やってるんだ…。まぁ大丈夫だと思うが、少し時間空けるか?」

「いえ、大丈夫です。すいません…」

「それで最近どうだ?」

「えっ…そうですね、少しは良くなったのかな」

「話とかするのか?」

「…会話は全然です。でも最近お父さんの機嫌のいい日が多くて、お母さんも元気な日が多くなってると思います」

「そうか、学校に来るのは苦じゃないか?かなり遠いだろ、この学校は」

「全然そんなことないですよ。みんなと会えるの毎日すごく楽しみですし、授業だってみんなと受けたら色々話せて嬉しいです。先生も少しおさぼりさんですけど、優しいし、お話ししてくれますし学校が嫌なんてことは全くありません」

「お前はクラスのムードメーカーだからな。お前が楽しそうだとクラスも明るいから助かる」

「ム、ムードメーカーですか!、そんなことないですよ。私なんて…」

「教師として心配なところを挙げるなら、向井は自分を卑下しすぎだ。もっと自信を持て。お前は自分が思ってる以上に出来るやつなんだから」

「私ですか…?」

「ああ」

「…ありがとうございます。今すぐは無理でも、いつか私も自分に自信を持てるようになりたいです」

「ゆっくりでいいさ、お前はまだ若いんだから」

「先生だってまだ20代じゃないですか」

「俺はいいんだよ。なんか他に言っておきたいこととかあるか?」

「大丈夫です、少しすっきりしました」

「顔の赤みも引いたみたいだしな。面談終了だ。次呼んできてくれ」

「誰を呼んで来たらいいですか?」

「じゃあ皆川を呼んできてくれ」

「分かりました。失礼します」

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