下手な感想ですが、この作品が画期的なのは何故なのか考えてみました。
VRMMOモノに違和感を感じる、と言いながら同じようなジャンルを最近では集中して読んでいます。
この作品も含め、何作品かはゲーム内外の掲示板を使って、生身のプレイヤーたちの感情を巧みに表現することに成功しています。
私が知らなかっただけで、おそらくは広く知られたテクニックではないかと思われますが、この作品では雰囲気を演出するために非常に上手く取り入れられていると感じます。
またこの作品では、陰謀などが全く無いにも関わらず
「出来るだけランニングコストを下げて課金アイテムで儲けたい運営」
「露骨にライバルを出し抜きたい攻略ガチ勢」
「自分だけの特殊な目的を追い求めるプレイヤー」
「それらの狭間にあって己のやりたいことをのんびりやっているエンジョイ勢としての主人公」
これらの要素を全部絡めることで、生々しくもドラマチックな物語を展開しています。
よくよく考えたら、物凄く文学している作品ではないかと思います。
けっして綺麗とは言えない人間の内面(主に残念な方向で)を書きながら、状況に流されつつもソレを楽しんでいる主人公がいる。
彼らはゲームをゲームとして楽しみ、バラバラのベクトルで関わりあうが故に混乱を生じ、事態は終息するのですが理想的な状況へ収束するのかは常に不明です。
その過程のドラマが、この作品の面白さになっています。
舞台は運営とプレイヤーにより、経済的な理由と利己主義が作り上げた状況です。
そこへ社会人として常識的感覚を有する普通の女性(主人公)が投げ掛けた波紋は、このオンラインゲームにどういう結果をもたらすのか?
久しぶりに目が離せない作品に出会いました。
「オンラインゲームのチャットルーム」は群像劇に最適のフォーマットなんだって、ご存知でした?
掲示板のコメント形式というフォーマットはWeb小説でのみよく見かけられる特異なものですが、ネット世代の読者層にとっては見慣れた形態。そして、大量のキャラクターが「一堂に会して」喋り続けることができるので、多方向の人間関係を描写しながら同時にキャラを立たせることができます。
多くのWeb小説では掲示板シーンを単なる「世論を示すおまけシーン」、「モブの会話」、果ては「モノトーンで主人公を褒めるだけ」のために使っています。しかし本作の場合、チャットルームの会話が作品の半分近くを占め、しかもそれが主人公を除く主要キャラクターたちの紹介の場であり、ゲームの情報提示の場であり、そしてキャラクター同士の関係性を見せる場になっています。何十人といる主要キャラクターたちがそれぞれの個性を発揮して、活き活きと罵り合い、情報交換し、陰謀を紡ぎ上げ、そしてそれぞれのサイドストーリーを進めていきます。
この構成が、「仕立て屋」というテーマとガッチリと噛み合っています。主人公のビビアは服飾職人。単に「強い装備を作るだけ」ではありません。掲示板でキャラを立たせたたくさんのキャラクターたち、さらにはNPCたちのために、それぞれの個性やニーズ、何より外見的特徴に合わせた衣装を仕立てていきます。デザインや手作業に何時間もかけて丁寧に作られた衣装には魂が宿り、キャラクターの個性を際立たせるような「スキル」が付きます。たとえばある人物は、本当はアイドルになりたかった。そんな彼女のためにデザインされた衣装の数々には、アイドルに似合った「スキル」が付きました。ゲーム的な描写にかこつけて、キャラクターの特徴を捉えた贈り物として機能しているのです。これを物語の中心に据えたのが本作。たくさんの個性豊かなキャラクターを出したからこそ、それぞれのキャラクターに服を仕立てていくということが物語として十分に面白くなる。勇者でも戦士でも魔法使いでも貴族でもなく、「仕立て屋」だからこそできるストーリー。
といっても、本作は基本的にギャグです。
面白い漫才やコメディというものははしばしば濃密な情報を叩きつけてきますが、本作も同様。チャットルームのシーンを非常に効率的に使って、過密なくらいに圧縮して情報を届けています。主人公はチャットルームに参加せず、マイペースに自分のやりたいことをやりながら衣装(国宝級のアイテム)を仕立てていきます。その主人公の行動がゲーム世界に大渦を巻き起こすので、ベテランプレイヤーたちが右往左往します。チャットルーム上での混乱と、それを気にもとめない気づきもしない主人公の温度差とギャップ。これを楽しめます。
本作はその性質上、序盤から大量のキャラクターが一気に登場して大量の情報を叩きつけてきますので、戸惑ったり混乱したりすることもあるかもしれません。が、とりあえず笑いながら読み進めてみてください。キャラクターがわかるようになってから後から読み返せば、だいたい全部わかるようになります。まずはとにかく、ご一読ください。
めちゃくちゃ面白いです!続きが凄く楽しみです。
主人公視点の一人称と、プレイヤー達のチャットという一風変わった形式の小説が新鮮でした。
主人公視点では生産したり、狩りしたり、ゲーム内のイベントを進めたり、とゆるくゲームを楽しんでいます。が、その裏ではまったくゆるくない殺伐としたプレイヤー達のカオスな日常が繰り広げられている。温度差で風邪ひきそう。
そこには主人公が全く関わらなかったり、関わってきたり、でも主人公は全く気づかなかったり。
また、純粋にクラフト部分が面白くて、次はどんな服を作るんだろうとワクワクします。
他のプレイヤー達は皆クセの強い面々ですが、それぞれのプレイスタイルでゲームを楽しんでいて、そこにもドラマがあって面白いです。
徐々に明かされるゲーム内のストーリーも気になります。
めだかさんが可愛い!
ゲーム内でファッションを楽しむのが好きなのでとても楽しく読んでます。
主人公が鍛治とか錬金術とかでなく仕立屋というのが良いと思いました。
強いとか弱いとかの実用性とは別に自分を表現するという部分も多く含む職業なのでぼっちプレイのはずなのに他人と深く結び付いていたりするのが微笑ましく読めます。
また主人公がめちゃくちゃ凄い奴でもめちゃくちゃ聖人でもなく、利益出そうとしてみたり、ビビってブロックしてみたり、するのが楽しいです。
ついつい熱が入り過ぎて良いものが出来たり、失敗したりというのも共感できてとても良かったです。
末筆ではございますが、心より続きを楽しみにしています。
最初は掲示板の雰囲気(というかゲーム内の独特のモラル)が自分とズレてて「やべーやつむっちゃおるやん」って思ってたけど、理解が進んでいくとある意味一貫しててスルー出来るどころか楽しめるようになった。モラル薄くてやばいのかと思いきや薄くてもモラルは存在してて、自分の利益のために引くというスタンスであってもある程度のルールが存在してるのが良い。あと自分の利益のために動くせいで「やけくそ野郎」が少ないのも最低限の治安に一役かってると思う。みんなその辺りを理解してくれるならややこしいルールなんていらないんだ!みたいなこと言われてもちょっと納得する。
理屈っぽくしてるかと思いきや、みんな結局感情であっさり手のひら返していくのが個人的に好み
正直服の話は素人でついていけないことも多いけどそこは割り切ってストーリーを楽しませてもらってます
この作品のNPCは、未来のゲームということで、ある程度受け答えのできるAIでありつつ、あくまでゲームのNPCとして描かれています。
個人的にVRMMO作品でよくある人間のようなNPCに違和感があるので、この作品の扱いが1番ゲームとして納得感があって好きです。
また、理不尽なユニークスキルなどがなく、あくまで他の人でも再現可能なことをしている点もめちゃくちゃ良い!
ゲームのシステム面だけでなく、徐々に掘り下げられていく掲示板の住民達も魅力的で、回を追うごとに皆んな好きになっていきました!
こんなに全部のキャラクターを好きになった作品初めてです
『気まま暮らしで気ままにクラフト』をコンセプトとするVRMMOゲーム「きまくらゆーとぴあ。」(通称: 「きまくら。」)をスタートした主人公が、ミッションの達成やプレイヤーとのコミュニケーションを無視して、ひたすら生産に打ち込んでゆく。運営が緩くプレイヤー民度が低いため緩やかな過疎の道を進んでいるものの、そんなことはお構いなく我が道を行く主人公のバイタリティは見事で、それがゲーム全体にも良い影響を及ぼしてゆくことになる。
基本的にはゲーム外でのやり取りはほとんどなくゲーム内でのやり取りだけで進んでいく。なお毎回、主人公視点のストーリーのあとに掲示板でのやり取りがあり、序盤はそのやり取りがややわかりにくいものの、ゲームの内情がわかり始めるとプレイヤー間のやり取りも本文とうまく連携して面白くなっていく。MMO好きにはオススメ。
女性主人公のVRMMO作品でこんなにハマると思いませんでした。
作品タイトルを見ても一体どんな作品内容なのかが判りにくく、VRMMOも馴染みない人間にとっては正直とっつきにくいと言った第一印象でした。
しかし、とりあえず時間もあるし女性主人公となっているから読んでみようと思って読み進めると、予想を裏切られる程の面白さではないですか!!
また、ストーリーがテンポ良く進み、コメディ感もあるため、主人公ビビアに振り回される周りの人たちの有り様に、ついクスリと笑ってしまいます。
掲示板回は最初誰が誰だかわからず、内容もよくわからなかったので読み飛ばしていましたが、後から「これがあの時の伏線だったのか!!」と驚愕することが多く、その後何度も読み返しています。
この作品は主人公ビビアが、自分でオリジナルの服を作って販売したり、依頼を受けてその人にあった衣装を作ったりとしていますが、ビビアの衣装作りの作業シーンが本格的で面白いのも特徴です。
その辺りが他作家の作品になりますが、某魔導具師のダ〇ヤの似ていたので、(ビビアはダ〇ヤにさらにオタク感と毒が少し足されている感じですが)女性のモノ作り作品が好きな方には是非オススメ作品です!!
VRなどのゲームものは避けていたのですが、
ちょっとライトなものが読みたくなって読んでみると、
ゲームストーリーの面白さや見せ方に引き込まれました。
何より良かったのが、仕立屋としての仕事ぶり。
ゲーム世界だからこそアリなデザインを発想し、仕立てていく。
その思考や発想、状況ががとても楽しめます。
仕立て途中の描写の細かさやその思考が、
疎い私には、とてもプロっぽく感じ、
お客様となる人物も、どういった人物かがわかるため、
その状況がまた面白い。
ゲーム世界だからこその制限の緩くなった状況が、
プロの自由度を高めている。そんな印象を持ちました。
一先ずキレイに完結させた形をとった上で、
続きの話を読ませてくれているスタイルも好みです。
思わぬところで良い作品に出会えました。ありがとう。