第3話

暗い道を歩くベンジルの後ろをついて行くケネス。

(この先に何があるんだ?……まさか、人知れずナワバリを守っているのか?)

だとしたら、かっこいい。

(さすがボスだぜ!)

猫か人間か、はたまたカラスか。何にせよ、夜に1匹で決闘をしに行くのだったら……。


「にゃぁん」

高い猫の声がして、ケネスが驚く。

(誰の声だ?)

周りを見回すが、近くに他の猫はいない。いるのはベンジルとケネスだけだ。

(メス猫?にしてはしゃがれていたような)

(あ!デートってやつか!?ボスってそういう年だもんな。しかし相手のメス猫が見えないぞ)

ケネスがきょとんとする。

「にゃ……」

今度は聞きなれた低い声だ。ベンジルがぼやくときの声。

(今の声、全部ベンジルなのか?あんなに高い声でメス猫みたいに鳴いてるなんて信じられねぇ)

一体誰に?ベンジルの視線の方向には、人間の家があった。

(人間!?ベンジルは人間が好きなのか!?……そんなわけ、ねぇよな)

ベンジルの片目に傷をつけて奪ったのは人間だ。

(あの家で人間に飼われてるメス猫が好きなのかもしれない)

ボスだって恋くらいする。それは分かっていたことだ。猫はみんなそう生きるのだ。それは体が大きくて傷だらけの野良猫たちのボスであるベンジルも変わらない。

(でも、複雑だ……。ボスは人間なんかに飼われてるお高い猫が好きなのかよ……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

野良猫は真っ赤な金魚の夢を見る まこちー @makoz0210

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る