第2話
「お前、またあの猫に餌やってたのか?」
「いいじゃねぇか。余り物だぞ?」
ケネスとジェフが帰った後に網を片付けながら話す漁師の男。
「名前までつけちゃってさ。そんなにかわいいのか?足にでかい傷がついていたのに」
「あぁ……実はあの猫は特別なんだ」
「特別?」
「昔、死んだ兄ちゃんが飼ってた猫にそっくりでさ。同じ模様だったんだよな。似てるから兄ちゃんが言ってた『ジェフ』って名前をそのまま呼んでる」
「兄ちゃんなんていたんだ」
「3年前にしんじまった……心臓の病気でな。俺と違って病気がちだったから、いつ入院するか分からない状態で猫を飼うのは反対だったんだが、本人が絶対育てるって聞かなくてさ。……1年くらいは猫の面倒を見てたんだが、やっぱり入院が決まって……すぐしんじまったよ」
男の顔は暗かった。
「猫はどうしたんだろうな。兄ちゃんがしんでからしばらくは兄ちゃんを探しに行ったのかアパートからいなくなって……。それからは他の人が住んでるから、知らねぇな……」
「ま、あの猫は違うだろ。だってあんなに大きな傷、兄ちゃんが見せてくれた写真にはなかったしな」
〜アジト〜
港から帰ってきた二匹が魚を地面に置いた。
キラキラと輝く大きな魚を見て、野良猫たちは目を輝かせる。
「ジェフ!またあの人間からもらったのか?美味そうな魚だな!」
「いいなぁ!僕も今度こそ駅で撫でてくれる人間から美味しい物をもらってこなきゃ!」
「あいつか?スーツを着た黒い髪の女の人間!」
「そうそう!この前くれた液体のお菓子、美味しかったなぁ」
「最近は鳩用の餌を奪ってばかりだから、そろそろ生の魚を食べたかったんだよ!ありがとう、ジェフ」
野良猫たちは魚を美味しそうに食べる。それを見て笑顔になるジェフとケネス。
「あの人間は何故か俺の名前を知っている……。どうしてか分からないけど。あの人に似ている気がするし、やっぱり良い人なんだ」
その日の夜、皆でかたまって寝ていたアジトで物音がした。ケネスは耳を上げて起き上がる。
「敵……!?」
人間にここがバレたのかもしれない。ベンジルに知らせなくては。
しかし、人間の気配はなかった。代わりに、長いしっぽがゆらゆらと見える。
ベンジルだ。真っ黒なしっぽを揺らしてアジトを出て行く。
(ベンジル、どうしたんだ?どこへ行くんだろう)
ケネスはこっそりついていくことにした。
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