勇者はハズレ職業だと追放されました~マジムリ闇堕チシヨ~

いまノチ

第1話廃嫡と追放

勇者・・・

かつて、【英雄】の代名詞たるその職業。

勇ましい者と名のごとく、勇猛果敢な戦士であり、強靭な力と不屈の精神、正義の心を持って世界を救う者。人々の希望。

魔王を倒せる唯一の者。


そう、言われていた・・・


だが、五代にわたり魔王を倒した者は勇者ではなかった。

それまでハズレと言われていた職業の者達が魔王を倒したのだ。

それに比べて勇者は、傲り高ぶり、弱きを虐げる傍若無人であり、人々が不信感を持っていた。その上で、魔王にぼろ負けした事で、【勇者】はハズレ職業と言われるまでとなる。


各国の王侯貴族は【勇者】の職業を恥とし、一族からその職業が出た場合よくて義絶勘当し追放又は幽閉、悪くて秘密裏に殺処分となる。


そんな世の中、ここに30年ぶりに【勇者】が誕生した。


それは、大国の第一王子であった・・・





「殺せ」




父である王の言葉が大聖堂に響く。

司祭が、恐々と告げた息子の職業を聞いての言葉で、司祭は自分の事を言われているのかと思ったのか顔を青くした。

だが、司祭の前にいる王子はそれが己に対する物だとわかった。

近くに居た母である王妃もそれに気付き、息子の職業を聞いて固まっていた身体を動かし、息子を守るように身体を広げた。


「お待ちください!どうかご慈悲を!」

「ならぬ。我が王家からその様な者が出たなど、あってはならぬ」

「確かに勇者は酷い者が多かったと聞きますが、ルイは優しく思慮深い子です!文武共に優れ、あなた様も自慢の息子とおっしゃっていたではありませんか!」


父と母の言い合いを、王子ルイヴィストはどこか他人事の様な感覚でぼんやりと聞いていた。

実感が無かったからだ。


「勇者など、余の子ではない!お前が不貞したのではあるまいな!」

「なっ?!」


母を責める言葉に、やっと我に返るも、絶句してしまう。

父から受け継いだ青の瞳は王家の色と言われているというのに。


「父上!それはあまりにもっ」

「うるさい!お前に父と呼ばれとうないわ!恥さらしめ!騎士よ!王子を偽った大罪人と不貞をおかして余を欺いた大罪人を処分せよ!!」


咎める声を上げた王子に、王は激昂し、騎士達に命じた。

あまりの事に王妃が倒れそうになったのを、王子が支える。

騎士達は戸惑いながら剣を抜いて、王子と王妃を囲むが、斬りかかる者はない。


「何をしておる!はやくーーー」

「陛下、神殿内で血の穢れはご法度です」


もたもたしている騎士に急かそうとする王を、宰相が止める。


「それに、王妃は帝国の元皇女。下手なことをして帝国に攻め入られる口実となるでしょう」

「む。だが、帝国も、皇女が勇者を産んだなど恥であろう」

「ですが、皇帝は妹であられる王妃様を溺愛なさっております。どう思われるかはわからない」


確かに、大河を挟んだ隣国である帝国の皇帝の王妃に対する溺愛は有名で、婚姻が決まった際、年上であるが義理の弟になる国王に「妹泣かせたら・・・」と覇気をぶつけてきたのだ。手元に残したかったのだが、前皇帝と前国王の決定故に逆らえなかった。

甥っ子であるルイヴィストの事も気にかけており、王妃共々いつでも里帰りしていいぞと言われている。


王は口を歪ませた。


「今すぐこの者共を帝国に送り付けろ!」


そんな女を娶らされた賠償を請求してもいいが、あの腹立つ皇帝がどうするか様子見としよう。

たとえ溺愛していたとしても勇者を産んだ腹など蔑むだろう。

勇者などという職業の甥をなぶり殺し、存在を消す事だろう。

高潔ぶったあの男も、結局自分と同じだ。




「これらは本日を持って廃妃、廃嫡とし、この国から永久追放する!この国に在るを見つけた場合即刻処刑致す!連れていけ!」


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勇者はハズレ職業だと追放されました~マジムリ闇堕チシヨ~ いまノチ @oujisyujinkou

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