第14話 冬の匂い

「冬の匂い」


あんなに懐かしかった

冬の匂いが

いまはもう

苦しいとしか思えない


あんなに美しかった

冬の夕日が

いまはもう

はかないとしか思えない


灯油の燃える匂い

土間の匂い

山裾の家々から

夕げの煙が立ち上る


確かに生きている

確かに誰かが生きている

こんな小さな冬の町で

誰もが一生懸命に生きている


あんなに嫌いだった

この町の冬

それでも懐かしい

この町の冬景色

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わたしの町の冬景色 詩川貴彦 @zougekaigan

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