君に恋した勇者 彼女の全てが知りたい
絹のようなさらさらした黒髪、黒金剛石のような瞳には悲しみしかない。冷たい印象を与える容姿は、誰かを待ち続けているように見える。笑顔を見てみたい。色んな表情をさせたい。どんな人なのか知りたい。どうして、そんな表情をしているのか教えて欲しい。それが、君に対して懐いた最初の感情だった。
僕が生まれたのは、国の端にある小さな村。村人も少ないから、皆親戚みたいな感じだった。
生まれつき僕には、魔力と神力が見えた。人間が持つ神力は光のような色。人によりその大きさは違うけど、必ず存在する。魔力は、魔族が持つもの。たまに、人間の間に生まれた色持ち《災厄》にも表れるけど。魔力は、個々によって色も大きさも違う。それは、皆見えるものだと思っていた。僕にしか、見れないのだと知った時にはこのことは誰にも言わない方が良いと察した。その時には、神力の強かった僕は勇者に祭り上げられていたから。これを言ってしまえば、欲深い人間たちは魔族を滅ぼすために動き出すだろう。
勇者なんていらないのに、人間たちは勇者を創りあげる。魔王と盟約があるから、魔族は人間を襲わない。それでも、勇者を生み出しているのは魔王を滅ぼす頃合いを虎視眈々と狙っているから。
そして、今代の勇者に選ばれたのは僕だった。
僕が勇者になったのは、魔王と話し合うため。魔族がまた、この数年で人間を襲いだした。これは、明らかな盟約違反。しかも、盟約を持ちかけた魔族側から。おかしいと思った。盟約の際、魔王は言ったのだ、「盟約を破れば滅ぼす」と。それは、魔族側からの違反はないと言っているから。だから、直接話し合いたいと思った。魔族がどうして人間を襲うのか、どうすれば双方幸せになれるのか。
僕は、一人魔族の住まう領域に足を踏み入れた。これも、違反だが緊急事態。そう正当化させる。巨大な魔力が見えるところに一直線に進む。そこが魔王がいるところだ。
でも、どうしてだろう。何かを守るように、神力があるのは。
巨大な魔力と、神力が入り混じる部屋には、数人の魔族と人間の男の子、そして女性がいた。
恐ろしく整った顔立ちの女性。彼女が、魔王だと一目見て分かった。そして、場違いな神力が守るもの。その神力のことを伝えると、彼女は誰かを想って泣いた。
魔王である彼女と、話し合いが終れば人間界に帰らなければならない。けど、どうしてもここを離れたくなかった。
全てに絶望して、虚空の中にいる彼女の笑った顔を、泣いた姿を、驚いた表情を、怒った様子の彼女を見たかった。彼女のことを知りたかった。僕のことを嫌いでも、全てが知りたかった。
僕は、 恋 したんだ。
誰よりも寂しがり屋で、優しくって、人間と魔族双方のことを考えていて、愛情深い彼女。
失った愛する人がいたとしても構わない。
、僕に恋して
僕が誰よりも世界を輝かせてあげる
一緒にこの恋と育んでいこう
彼女を愛した、貴女に恋をした クロレ @kurore
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