第10話 ~Fine~
・・・
僕が目を覚ますと、そこは真っ白な空間だった。
ただ、いつも見ていた真っ白な病室ではなかった。看護師や医者もいなくて、自分一人が真っ白な空間にいた。
「黒川くん!」
「・・・?!」
僕は、声のした右側を向いた。
そこには、死んだはずの彼女がいた。
「…ついに来ちゃったんだね。」
彼女は静かにそう言った。
その瞬間、僕は自分がこの世から切り離されたんだと確信した。
「…白井は、ここに来てほしくなかった。」
僕は、言葉を紡ぐように静かに続けた。「もう戻ることはできないのか?」
「うん。私も黒川くんも、この世ではいない存在だよ。」
彼女は、なぜかとても明るかった。後悔が全く感じられなかった。
僕は、彼女のその明るさが不思議だと思った。
「白井は、ここに来るべきじゃなかった。僕よりも、白井は人生を楽しんで、めいっぱい生きようとしていた。そして僕を助けてくれた。僕の傍にはいつも、白井がいた。なのに、白井はちょっとお菓子を食べた後でいなくなって、僕がここに来るまで会えなかった。」
「…私だって、黒川くんの隣にいたかったよ。」
彼女は、僕を見て優しく微笑んだ。「黒川くんは、ずっと私の大切な友達なんだから。でも、こうして黒川くんは、ここに来てくれたし! これから生活していこうよ、二人でさ。」
「真っ白な空間すぎないか、ここ?」
僕は、周りを見渡した。本当に「真っ白」という情報しか入ってこない。
「大丈夫! この上の方には、まだ世界が広がってるから…さ、行こうよ!」
彼女は、よく分からないことを言った。が、彼女のその自信満々な表情を見ると、どこか信じてしまう。
「もうどうなったっていいし、行こうか。」
僕は、彼女に手を引かれて、上の方に向かった。なぜか、体がフワッと浮いていた。
・・・
僕は、変わった人生を送っていた。
それでも、彼女と出会って少しだけ楽しいと思える日を送れた。
それで十分だ。
これから先、別にこの世で過ごせなくてもいい。
僕には彼女がいるし、彼女には僕がいる。
人生を楽しむ人間に出会えて、よかったのかもしれない。
僕は、彼女に出会えてよかった。
最期に出会ったのは、人生を楽しむ人間だった。 キコリ @liberty_kikori
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