第2話 新たな世界の幕開け
目を覚ます。天井の木の柱をゆっくりと眺める。
ここはどこだ? 何があったと思い出そうとすると頭痛が襲う。
「うぐぅ・・・」
と頭を押さえる。最後に覚えているのはユンボのバケットが自分の体にあたる鈍い音
そうだ・・・あの瞬間僕は死んだんだ。死んだはずだと意識がなくなっていく最中感じたことを思い出す。しかし、生きているこれは幸運だ。生きていたことに素直に感謝した。
ドタドタドタ
こちらに向かってくる音がする。
多分、さっきのうめき声で気になった人がこちらに向かっているのだろう。しばらくすると扉が開いて中年の女性が心配そうに顔をのぞかせた。
女性は白い白衣を着て黒い髪に赤い瞳、綺麗と素直と思わせてくれる顔立ちをしていた。
「うめき声が聞こえたからまさかと思ったから来てみたけど、気が付いたんだね」
「・・・ここは? 」
「ここは私の家だよ、崖の下で倒れていたあんたをここまで運んできたんだ」
「・・・そうですか、ありがとうございます。」
「いやぁ、一時は如何なる事かとおもったよ、こんな小さな子が倒れているんだものびっくりしたよ。おかげで
「!?」
思わず飛び起きた。自分の手足を見る明らかに自分が知っている身長より小さい。130㎝~140㎝位の身長だろうか。自分の体をぺたぺたと触り違いを確かめる。
自分の身に起こっていることが理解ができず混乱する。僕はどうなったんだと。
一連の行動に女性はびっくりしつつ、落ち着きなと声をかける。
「いろんなことがあって気が動転しているのも無理はないよ、ゆっくり状況を飲み込んだらいいさ」
「・・・・・・はい」
その優しい言葉に思わず朗らかな気持ちになる。
気持ちが落ち着いたところで思いっきり深呼吸をする。薬品の匂いがスーっと鼻に抜ける。それを感じると不思議だが落ち着いた。その姿をみて女性はにっこりと微笑むと話を続ける。
「とりあえずは落ち着いたみたいで良かった。落ち着いた所で悪いが名前を教えてくれないかい?」
「・・・・・・」
「・・・あーそうかい、そうかい私が先に自己紹介すべきだね、私の名前はマリトア・シンク。こうみえてこの町で薬師をしている。結構評判なのよウチ! 年齢は今年で35歳・・・年齢の話は年々しんどくなるからしたくないね。後は好きな食べ物はクリームシチュー。あれが嫌いな人はいないわよね!! 」
「・・・・・・」
「嫌いなものは牛乳とチーズ。あれなんか臭いわよね。おいしくないわ!! 」
「・・・・・・」
「これほどまでに反応がないとさすがにお姉さんも悲しいぞ」
「・・・思い出せないんです」
「なにが? 」
「・・・名前です。」
名前が分からない。住んでいた場所や職場、知人、友人の顔も覚えだせる。なのに自分の名前だけが思い出せない。マリトアは最初こそ顔をしかめていたがやがて彼の肩に手を置く。
「・・・・・・無理に思い出さなくてもいいさ、しかし名前がないのは不便だね。仮でも名前がいるね。何かないかい? 」
そういわれると男は周りを見渡す、すると本棚の側面のいたから盛り上がるように出た釘に目をなぜかとられた。なんでか自分に関係がある気がした。男は答える。
「釘・・・・・・ビスでお願いしてもいいですか? 」
「ビス? ビスってネジ状の釘の事だろ。自分に変な名前つけるね。」
「・・・いや、なんかしっくりきます。これがいいです。」
「そうかい、あんたがそう言うなら私は何も言わないさ。案外それが失ってる記憶に関連してるかもしれないしね。では、ビスとりあえず顔と手を洗っておいで、ちょうどお昼だごはんにしようじゃないか。洗面所はここを出て右の二つ目のドアだよ、リビングは出てそのまま右に向かっておいで突き当りがそうだよ 」
そう言うとマリトアは部屋を出て行った。ビスは少しまだ混乱していた。しかしそれと同時に漠然と理解をする。ここは僕の生まれた世界ではないらしいと。家の作り、窓から見える景色、歩いている人の服装。部屋の装飾どれをとっても記憶から思い出せるものにはなかったものだ。ビスは立ち上がると歩き出す。やはり視線が低い、歩く歩幅を狭く違和感を感じる。自分が変わってしまったことを嫌でも実感する。
洗面所に向かうと洗面台の鏡を見て愕然とする。なんとなく予想は出来ていたとは言え、実際にみると何も言えなくなる。そこには自分の知っているのとは違う人間がいたからだ。金髪に青い瞳、白い肌この時点でもう別人だ。でも間違いなく自分だと認識している。頬に触れる、温かい。触れた感触がある。
「いつまで自分の顔見てるんだい、ちょっと可愛い顔だからっていい加減にこっちにきな」
可愛い・・・そんなこと生まれてこの方言われたことが無い。確かに可愛いかと再度自分の顔を確認する・・・いやこれ以上するとマリトアに怒られると察しビスは顔と手を洗い洗面所を出るのであった。
異世界レンタル~買うより借りろ~ 御餅 @tonjiru_
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