A and X, something else.
同性婚ができるようになったら、僕は結婚を考えるだろう。
結婚しなくてはいけないと思っているのではなくて、誰かを僕の「特別」であると示すのに、結婚は都合がいいからだ。
その「特別」は、恋愛感情に由来しない。
その「特別」は、性欲を伴わない。
それでも、僕は、その人を「特別」に思っている。
関係性として、成立しうるならば、の話だけど、僕は、少しばかり考えてはみるだろう。その上で、やっぱり一人がいいと結論する可能性の方が高いのだが。
もし僕が海外に行って、敬称を選ぶことがあれば、「Mx.」を選ぶだろう。
将来無性の身体を作りやすくなったら、僕はそうするだろう。
だけど、結局のところ、それだけの話だ。
僕がそうしたいから、そうする。
口出しも干渉も心配も、何もいらない。理解しようと努力しているふりも、僕と無関係のところで、無意味に続けていればいい。
それでも、これを読んでいる人が、自分自身や大切な誰かがアセクシュアルやXジェンダーであることに向き合いたいのなら、僕に助言を求めてはいけない。
僕は、僕のことしか知らない。
僕がここに書いたものは、参考にする程度にして、自分自身や大切な誰かのことは、当人と考えて、言葉にして、生きていくしかない。
結局アセクシュアルもXジェンダーも、不完全なカテゴリに過ぎないし、人間は完全にカテゴライズなんかできない。
だから、人間は思考する。
僕はそう思う。
「自分で考えろ」と突き放すだけも不親切に過ぎるから、僕の読んだ本の一部を書いておく。自分の頭で考える助けになればいい。
そして、僕の言葉が、誰かの待つ海岸に届いたなら幸い。あの頃の僕に届くことはないのだけど、届いた気になれるかもしれない。
(了)
参考文献
『はじめてのジェンダー論』加藤秀一著、有斐閣、2017年
『見えない性的指向 アセクシュアルのすべて――誰にも性的魅力を感じない私たちについて』ジュリー・ソンドラ・デッカー著、上田 勢子訳、明石書店、2019年
A and X 染井雪乃 @yukino_somei
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