現代によみがえった「太宰」

間違いなく、今まで出会った中で一番「最強」な短編。

とある人間の、1/4日を描いた作品。その描写は、ほんとうに緻密で、繊細で、どこまでも深く、それでいて、読み返すたびに味が濃くなる――「苦み」という味が。

そこにあるには、
ありふれた日常でもなければ、非現実的な世界でもない。
救いでもなければ、絶望でもない。
不思議な世界でもない。だが、陳腐な世界でもない。

それでも、読む者はみな、何か得体の知れぬものに足を取られずにはいられない。そして、夕日の中で抱いたこの感情…………きっとこれは、「苦み」なんだろう。