●THE YARDBIRDS「ROGER THE ENGINEER」(Epic)
ジェフ・ベック在籍時、すなわち第三期のヤードバーズのオリジナル・アルバムである。これでようやく、三大ギタリスト揃い踏みってことですな。
1966年発表時には12曲収録、後にリイッシューされた盤ではジミー・ペイジ加入後の「サイコ・デイジーズ」「幻の十年」も加わって14曲となったこのアルバムでは、インストの「ジェフズ・ブギー」をはじめとする多くの曲で、ベックのトリッキーでトンガったプレイを聴くことが出来る。
すなわち「サイケデリック・サウンド」の誕生である。知っている人しか知らない話だが、東芝音楽工業から初めてリリースされたときには「サイケデリックのエース」なんてトンでもなタイトルがついてたんだぜ(笑)。
それはともかく、このアルバムにも、ヤードバーズに多大の影響を与えたスタンダード・ブルースが2曲おさめられている。クレジットこそメンバーの名になっているものの、「ナッズ・アー・ブルー」はまさしくエルモア・ジェイムズ(さらに言えばロバート・ジョンスンだが)の畢生の名曲、「ダスト・マイ・ブルーム(ス)」そのものである。ちなみに、この曲では珍しくベックがリード・ヴォーカルをとっており、また、この「ナッズ(究極という意味)」というタイトルから、トッド・ラングレンがデビュー時のグループ名をつけたという小ネタもある。
もう1曲、「ラック・マイ・マインド」もメンバー名義になっているものの、実はスリム・ハーポことジェイムズ・ムーアの「ベイビー、スクラッチ・マイ・バック」の歌詞だけをかえたものである。以上の2曲はともに、「BBCセッションズ」というアルバムでは、原曲のタイトルと歌詞で収録しているので、そちらも聴いてみて欲しい。
発表当時、クリームと並んでもっとも先進的なサウンドを追求していたヤードバーズ、というかジェフ・ベックだが、やはりブルースから得たインスピレーションには多大のものがあったことが伺える1枚である。(シリーズ・了)
(2000.11、原文ママです)
From Father To Son(ロックアルバムで聴くブルース) さとみ・はやお @hayao_satomi
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