●HUMBLE PIE「SMOKIN'」(A&M)
オリジナル・メンバーのピーター・フランプトンが脱退し、かわりに元コロシアムのギタリスト、デイヴ・"クレム"・クレムソンが加入したパイ中期のアルバム。ピーターがいた頃はどこか木に竹をついだ感じで中途半端にジャズっぽかったサウンドも、完全にブルース一色に塗り直されている。気合いの入った一作。
いわゆるスタンダード・ブルースに当てはまるのは「オールド・タイム・フィーリン」(トラッド)と「アイ・ワンダー」(ギャント/レビーン)くらいだが、白人ロックンローラー、エディ・コクランの名曲「カモン・エブリバディ」もここではまっ黒け状態。絡み合うツイン・リードのソロがカッコいい。数あるカバー・ヴァージョンの中でもベストの出来栄えである。
その他のオリジナル、たとえば「ホット・ン・ナスティ」「穴ぐらの30日間」なども首まで泥水につかったかのようなディープさ。スティーブ・マリオットのソウルフルな歌いっぷりは、一度聴いたら忘れられない。「アイ・ワンダー」の熱唱には、思わず鳥肌がたってしまう。その早すぎる死が惜しまれる人だ。
ハンブル・パイは、その強烈なブラックミュージック・マニアのイメージが災いして、セールス的には今ひとつだったが、 今聴いてもまったく古臭いという感じはない。最近の形骸化したHM/HRよりよっぽど中身がつまってまっせ。
(2000.11、原文ママです)
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