最終章 俺の記憶から消えろ!頼むから…

 俺はある日、覚悟を決めた。


 今、自分が置かれている地位、環境、そして今まで踏ん張ってきた忍耐、その実績と成果を全て投げ捨て、玉砕覚悟で組織を潰す!そう、覚悟した。


 その犬死の相手は、この支店のトップ2人だ!


 田舎者女好きナルシストの支店長と不細工脳足りん二枚舌の支店長代理だ。


 ここで言っておくが、先に喧嘩を打ったきたのは奴らだ!


 不細工脳足りん二枚舌の丸投げ姿勢に支店内の幹部社員の憤慨が昂まり、それを是正せず、この期に及んでも不細工を庇い続けた田舎者女好きナルシストの責任は大きいのだ。


 俺は奴らの指示に全く従わないと決意し、仮に奴らが不用意に俺に忠告して来た場合、奴らを睨みつけ、怒鳴り上げ、恐怖を味合わせる事を固く心に誓った。


 それがだ…


腐れ神よ!


 その矢先にどうして俺をコ○ナに感染させるのか!


志し半ば、無念にも、俺は、このタイミングでコ○ナに感染し、それから1ヶ月間、職場をリタイヤしてしまった。


 更にだ、腐れ神が、俺に追い討ちを仕掛ける。


 まだ、コ○ナ感染者が爆発的に増大していない頃であった。


 まだ、マスコミは誰がコ○ナに感染したか?その対象が著名人でなくても興味を抱いていた。


 そう、マスコミ=世間がコ○ナ感染者差別を謳歌している真っ最中であった。


 そこに、能無し野郎どもが!漫然だらりと、身内社員を守ることなく、個人を犠牲にし、マスコミへ餌を差し出しやがった!


 この腐れ組織は、一丁前に大企業たる責任があると宣い、社員のコ○ナ感染を公表しやがった!


 暇なマスコミは、それに、ハイエナのように群がった。


 そう!


 俺の支店トップは…、マスコミにビビりやがった!


 ホンマ腐れ組織だ!


 事もあろうに、俺の氏名以外は全て公表しやがった!


 年齢も部署も感染経緯も家族感染の有無も、俺を知ってる奴がその記事を見れば、難なく俺を特定出来るほどの情報を、最も簡単に、容易く差し出しやがった!


 俺は憤慨した、いや、驚愕したよ…


 こんな人でなしの組織があるのか…


 あっと言う間にネットニュース4社がアップした。


 病床の俺は、まさかここまで特定されているとは露知らず、Yahooニュースを開くや否や、何とまぁ~、いきなり俺だ!、俺のことがアップされている!


 俺は慌てて、同じく感染して肺結核を患い入院している妻に電話で注意を促した。


「完全に特定公表されている。娘には俺から連絡する。」と


 心を病んだ娘だけマンションに残していた。


 特定されれば、マンション内での差別行為が予見された。


 エレベーターにも乗れない。


 この当時、行動規制の問題から、他県ナンバーの自動車が損害に遭うなど、コ○ナ差別は過剰傾向にあった。


 よって、部屋が特定されれば、娘が差別に遭うのは火を見るよりも明らかであった。


 妻から電話が入った。


 九州地元の知人からLINEが殺到していると!


 妻は泣いていた…


 俺のLINEも酷いあり様だ!


 地元九州どころか、全国の知人から興味本位のLINEが入っている。


「記事を見ました。○○さん、コ○ナに感染したんだ!お気をつけてね。」と


 コメントの文字に、そいつの笑みが見え隠れする…


実家の親からも連絡が入る。


 近所が騒然となっている。完治しても帰省は控えるようにと…


 俺は怒り心頭により、職場に連絡した。


 職場の者が正直に答える。


「○○部長の感染の件、本社の指示どおり行いました。公表も職場がマスコミの詰問に困らないよう従前よりも、より特定して公表しているみたいです。」と


 俺はそいつに言った。


「公表内容は協議したのか?誰が決定したのか?誰がマスコミ担当だったのか?」と


「はい、公表内容については殆ど協議していません。簡単に決定されました。決定は、対策本部で本部長は支店長です。マスコミ担当は支店長代理が行いました。」と


 腐れ餓鬼ども!


「そしてですね…」


「なんだ?」


「マスコミ対応した支店長代理は、『私、マスコミに~、しっかり対応したわよ~』と御満悦に仰ってましたよ」と


 腐れ不細工脳足りん二枚舌め!


 当たり前だろ~が!


 こんだけ特定したら、マスコミの詰問なんて無いも等しいわ!


 社員をマスコミに売っておいて、社員の病状よりも自身の手柄か!


 腐れ根性にも程があるわ!


 俺は我慢の限界に達し、直接、支店長にメールで直訴した…


「おいおい、ここまで公表する必要はあったんかい?何でもマニュアルどおりにするから、個人を犠牲にするんじゃ!」と


 奴は沈黙の時間を作り、その挙句、こんな無頓着なメールを俺に寄越しやがった。


「貴方が部長として、前もって公表対策、マニュアルを検討していないから、こうなったのだ!」と


 おい!


 おい、腐れ!


 田舎者の女好きナルシストよぉ~!


 誰が感染するか、前もって分かるのかい?


 俺は神様か?


 マニュアル人間にも程があるぞ。


 いいか?


 俺が前から言っていた事を思い出せ!


 コ○ナ対策で一番エネルギーを使うのは社員の感染公表とその個人情報の兼ね合いと!


 まさか…


 感染者の俺のせいにするとは…


 コイツは長としての責任を放棄してる…


 俺はその時、コイツの本性が見えた。


 そして、瞬間的にこう思った。


 こんな組織から、早く消えよう…と


 俺はコ○ナ療養の後、職場復帰したが、また、離職した。


 あの田舎者女好きナルシストの支店長が、俺と残り期間、3ヶ月、一緒に仕事をしたくないと、女々しく宣い出し、俺への報復として、俺が入院中、奴に送ったメールを本社の人事に送りつけ、その後の俺の昇進に蓋をした。


 奴は言った。


 確かに言った。


「こんなメールすると、全て証拠として残るよ。今度からやめた方が良いよ。」と


 案の定、俺は干された。


 まぁ、その時、既に、こんな腐れ組織からは足を洗うつもりでいたから、昇進などどうでも良かったが…


そして、俺は奴の望み通り、職場から消えた…


 最期はあっさりとしたものだったが、後味は今も悪く、憎しみのみが残っている。


 誰に対する憎しみか?


 あの最期の上司の2人に対するものか?


 会社組織、全体に対するものか?


 どちらでも良い。


 敢えて言うなら、世の中の全ての卑怯者…


 1人では俺に立ち向かって来れなかった偽善者共…


 俺は負けたよ…


 お前ら卑怯な偽善者共に完膚なきまで叩き潰されたよ…


 負けは認めるよ…


 だから、お前らを死ぬまで恨み続ける!


 いや、死んでも、地獄に行っても、恨み続ける!


 大海原、漁師…


 俺は夢を見てるのさ…


あれは、全て幻さ…


 俺はどこに居るって?


 真っ暗闇の地下室だよ。


 何をしてる?


 夢を見てるよ。


 何の夢を?


 来世への希望の夢さ…


どうせ叶わぬ夢さ…


頼むから、もう、俺に構わないでくれ…


 大人しくするからさ…


 頼むから、俺をそっとしておいてくれ…


もう、お前らの悪口書かないからさ…


 卑怯な偽善者達よ!


 頼むから、俺の記憶から消えろ…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

憤慨 ジョン・グレイディー @4165

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ