たまには、こんな休日も。

狩野すみか

第1話

 ある日曜の昼下がり。

 普段は、アクティブな彼女と街に遊びに出かけることが多いのだけど。車で近くのスーパーに、日用品や食材の買い出しに出かけた後、僕らは炬燵に向かい合って座って、遅めの昼食をとっていた。メインは、三角おにぎりとカップ麺。彼女は赤いきつねを、僕は緑のたぬきを食べていた。

 お昼のバラエティ番組は、近くのグルメ情報を発信していて、僕らはそれを見るともなしに見ていた。

 世間には、きのこ派とたけのこ派に分かれて、ややこしいこともあるけど、赤いきつねと緑のたぬきには、それがない。

 大学進学で東京へ出て来た関西出身の彼女は、たぬきを知らず、出会った頃は、それで少し揉めたことはあったものの、今は、西東京、人によっては、「そこは東京じゃない」という人もいるけど、東京出身の僕は、緑のたぬきを食べ、彼女は赤いきつねを食べるのがごく普通になっていた。

 彼女がたぬきに慣れたように、僕もすっかり、関西では当たり前らしい、炭水化物×炭水化物の食事に慣れ、栄養バランスや摂取カロリーを気にすることもなくなっていた。

 大学時代に、彼女がキャンパスで拾った猫も歳を取り、炬燵の真ん中で長く伸びてくつろいでいる。

 こんな休日が、この先もずっと続いていけばいいなと思った。

「あ、」

「うん?」

「あそこのお店、移転してからカマが変わったとかで、味が落ちたとか言われてんねんけど、ロールキャベツが美味しいんだって」

「……老舗の洋食屋さんの?」

「そう」

 彼女の箸はすっかり止まってしまっていて、食い入るようにテレビ画面を見つめていた。

「今度行かへん?」

「いいけど、平日の夜?それとも、土日?」

「土日のお昼」

「分かった。後で、調整しよう」

 キッチンの壁にかけてあるシンプルなカレンダーを見ながら僕は言った。

「うん」

 彼女は、まだ画面の中のロールキャベツに釘付けで、僕と同じく、赤いきつねも苦笑しているようだった。

 こうなってしまったらもう、そのコーナーが終わるまで、ほとんど箸を動かさないことは僕ももう知っているので、僕は、彼女の邪魔にならないように、出来るだけ静かに麺をすすった。

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たまには、こんな休日も。 狩野すみか @antenna80-80

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