第2話

何故俺がこいつに話しかけようと思ったのかは全く分からない。

髪は金髪ロンゲ、筋肉ムキムキだし右腕にはよくわからないマークのタトゥーもある。

そんな赤いフレームのサングラスが目立つ彼にディーコンは話しかけた。


「ちょっといいかい?俺はここにまだ来たばかりなんだが、イマイチここがどういうとこか分からなくてさ…。もしよかったら何か教えてくれないか?」


そうたずねると筋肉ムキムキの彼は


「おう、なんだ。新顔かぁ?まあいい。ここはとにかく自由だ!バレなければ犯罪でもOK!というかよくこの俺に話しかけてきたな。」


「いやぁ、なんか直感がそうしてさ…ははは…。」


「ヘヘヘッ、よく分からんなお前は。俺に話しかけてくる奴なんてもう5年はいなかったぜ。これも何かの縁だ、乾杯でもしようじゃないか。」


そういうと筋肉ムキムキの彼はビールを2杯注文し強引に乾杯してきた。


「それじゃあ乾杯!」


「あ、おう!」


ディーコンがここまで相手に押されるのは珍しい。話しかける相手を間違えたかと少し思った。しかし、何故か仲良くなれそうな気もしていた。


「なあ、新顔。俺はマグラインって言うんだ。気軽にマグって呼んでくれ。」


「ああ、マグ。俺の名前はディーコンだ。よろしく。」


「ディーコンか。かなり昔のドラマでそんな名前の奴いたなぁ。警察モノのな。で、この街の何が知りたい?美味しいドーナツ屋か?

それともヌードルの屋台か?」


「まあそこも知りたいけど、さっきここの店員にろくでなしが流れ着く場所って言われたんだけど本当か?」


「うーん、まあ本当ではあるな。周りを見てみろ。普通じゃない奴しかいないだろ?特にこの街はそうだ。でも俺には居心地がいい。この騒がしさが丁度いいんだ。」


確かにディーコンがこのバーを探す道中に見たものはどれも綺麗なものではなかった。

路地裏にたむろしてるギャング。注射器かなんかのゴミ。壁には落書きだらけ…。

決して治安は良くない街だった。でもディーコンも案外居心地が良いと感じていた。

そしてディーコンは


「確かに居心地がいいのはなんか分かるな。死ぬまで居たいかと言われれば別だがな。」

と答えた。するとマグは


「俺たち案外気が合うんじゃねーの?でよ、俺はこの辺で仕事を紹介したりしてるんだけど興味ないか?」


「仕事か…。少し興味がある。どんな事をしてるんだ?人を撃ったりさらったりしてるのか?」


「おいおい、見た目でそう考えるなよ…。まあそういうビジネスもたまにあるけども。最初は簡単な事から依頼する。盗みは得意か?」


「盗み?何回かやった事はある。バレた事は一度もないよ。その仕事引き受けたい。」


「お、いいねディーコン。とりあえず今日の23時、今から4時間後にこの街のハードウィック書店に来てくれ。そこで落ち合おう。内容はそこで話す。」


と言うとマグはまたなといいバーを出た。

ディーコンはゾクゾクした。やっとこの旅の醍醐味が始まった。そう確信した。

マグと会う時間までかなり時間があるしこの街をざっと見て回ろうと思いバーを出て歩き始めた。

空気は悪いし空は曇ってる。これ雲じゃない。工場からでてるスモッグだ。

すれ違う人は皆イカれてる。見た目も考えも。

そう思いながらディーコンはワクワクした気分で人混みにのまれた。


ふと時計を見ると22時37分だった。

服屋や雑貨屋などを巡っていたら結構時間が経っていた。そろそろ集合場所に向かわないとなと思いタブレット端末でハードウィック書店を検索した。

ここから15分くらいで着きそうだ。時間も丁度いい。時計を見るのが後10分遅れていたらと思うと少しゾッとするがそんな事はどうでもいい。

足早に書店まで向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

テキトー宇宙★旅日記 ペンネームマスオ @riku16s

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ