番外編 温泉を見つけて

 この広い大陸を旅していれば、当然野営なども頻繁にしなければならない。

 ミスティは旅に慣れていないので、出来るだけ気を使っていたのだが……。


「やぁぁぁぁ! ぱぱもいっしょじゃなきゃやぁぁぁ!」

「ミスティ、なら主と二人で――」

「ままもいっしょじゃなきゃやぁぁぁぁ!」


 城塞都市ドルチェを出て、サーフェス王国に入ってすぐの頃。

 ミスティは盛大に泣きじゃくっている理由は、山中で見つけた天然の温泉に女性陣が入りたいというところから始まった。


 みんな一緒に風呂をしたいから、という子どもらしいものである。

 

「ミスティちゃん、リオン様は男性ですから」

「そうですよミスティ殿。どちらかを選んで――」

「ぱぱもぉぉぉぉぉ! みんないっしょぉぉぉぉぉ!」


 フィーナ、それにシャルロットと女性陣が必死に宥めているが、まったく泣き止む気配はない。


「ミスティ、いい加減我が儘を言うな」

「……なんでだめなのぉ?」

「いいか。人間は無闇に肌を異性に晒すものではないのだ」

「うぅぅ……わかんないよぉ」


 完全にぐずり状態に入ってしまった。

 まあ子どもに理屈を説明してもわからないか。


「どうする? 我は別に主と一緒でも構わんが」

「ど、どうするもなにも……さすがにそれは。あ、いやリオン様の事が嫌なわけではなくて……」


 レーヴァは龍だからこのあたりの感性が薄いのだろう。


 しかしシャルロットは顔を赤くして首を横に振っている。

 まあ彼女は俺の立場の手前嫌とは言えないだけで、さすがに困っているだけっぽい。


 フィーナは……。


「……」


 なにか真剣な表情をしている。

 いやそんな顔をしなくとも、別に俺は一緒に入ろうなどとは思っていないぞ。


「リオン様。ミスティちゃんがここまで言っているので、一緒に入りましょう」

「フィーナ殿⁉」

「フィーナ⁉ なにを言っている⁉」

「このままでは可哀想ですから。ね、ミスティちゃん」


 聖女のような微笑み。

 それの背後になにか鬼のような覚悟があるように見えるのは気のせいだろうか?


「うぅぅ……はいる?」

「はい、入りますよ」

「待てフィーナ。私は入るとは言ってない――」

「リオン様。覚悟を決めて下さい」


 ピタッと足下にミスティが抱きついてくる。


「はいる!」

「くっ……」


 先ほどまでぐずっていたのはミスティだったはずなのに、何故か今は俺が我が儘を言っているような状況になってしまった。


「さあ、行きましょうリオン様」


 腕を組んで、フィーナとミスティが俺を運ぼうとする。

 抵抗すれば出来るが、ここまで来たらそれも無駄というか、その後の方が怖い。


「分かった……」

「主が折れたか。フィーナも中々したたかになってきたな……」

「フィーナ殿……」


 二人が若干呆れたような声を出すが、止める気は無いらしい。

 

 俺は俺で、抵抗する気力もなくなってしまい――。


 そのまま、彼女たちと温泉に入ることになった。


――――――――――――

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ということで番外編でしたが、続きはご想像にお任せします!

お風呂シーンをより鮮明に想像するために、まずはコミカライズを読むことをオススメします(ダイレクトマーケティング!)


格好良いリオン。可愛いフィーナやレーヴァも見れますので、ぜひぜひお願い致します!

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転生したラスボスは異世界を楽しみます 平成オワリ @heisei007

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