25:ステッキ

 さっきまで明け方だったはずだけれど、この湖に来て時間が変わったらしかった。


 ――遠くは見えないが近距離ならまだ把握できるな……


 排除されるのをおとなしく受け入れるつもりはない。どう考えても穏便な方法ではないことが明白だからだ。僕が僕の意志でこの場所を訪ねたのだとはいえ、僕はこの場所を荒らそうと思って踏み込んだわけではない。敵対するつもりさえないのに、出口に案内されるでもなく命のやり取りで解決しようだなんて野蛮だと思う。

 僕は護身のためにステッキになりそうな太い枝を掴んで立ち上がる。対話可能な相手を見つけ出して、脱出方法を探らねば。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

《鍵》から始まる《餞》までの物語 一花カナウ・ただふみ@2/28新作配信 @tadafumi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ