悪の怪人軍団と戦うのは、胃色とりどりの五人の変身ヒーロー、幻獣戦団アニマライザー!
彼らは東映の誇る某○○戦隊××ジャーを彷彿させる、正義のヒーローチームなのです!
そして、本作の語り部を務めるのは、戦隊シリーズの主役レッド……ではなく。ピンクなのです。
このピンク、ただのピンクじゃありません。実は元々ピンクは別にいたのですが、その先代がチームを抜けてしまい、穴埋めに入ったのが最近まで普通の女子高生だった女の子。
だけどいきなり戦えなんて言われても、無理な話。
もっと友達と遊んだり部活に打ち込んだり、そんな普通な青春を送りたかったのに、どうして戦いなんて。
だけど仲間と共に戦っていくうちに、彼女も段々と変っていきます。もっと皆の役に立ちたい、足を引っ張ってばかりなのは嫌だ。
だんだんとヒーローとしての自覚を持ち、成長していくピンク。そして彼女がやる気になったのは、レッドの存在が大きかった。
三十路になってもヒーローを続ける暑苦しい熱血漢のレッドの事が、実は苦手なピンク。苦手なはずなのですけど。
ヒーローになり切れずにいる自分を鍛え、助けてくれるレッドに、ピンクは惹かれていきます。
ここで注目してほしいのが、このお話のタイトル。
『レッドに恋しちゃダメですか⁉』とは、すなわちレッドのことを想うピンクの気持ちなのです。
苦手なはずなのに、嫌いになり切れない。暑苦しいのに、頼りになる。そんなレッドとピンクの関係は、悪者との戦いにも負けないくらい気になりました。
戦隊ヒーロー愛に溢れた本作。戦隊ヒーローの事を良く知らない人も、戦隊ヒーローが大好きだと言う人も、きっと楽しめる作品です。
戦隊ヒーロー「幻獣戦団アニマライザー」の一員となり、悪の怪人と戦うことになった普通の女子高生、咲良。
本作品を語る上で欠かせないのが、永遠のヒーロー番組、スーパー戦隊シリーズ。何人もの色とりどりの戦士がチームとして戦っていくアレです。本作は、まさにその系譜に連なる、と言うか、非公式なれどスーパー戦隊そのものと言っても過言ではないかもしれません。
それくらい、戦隊ってこうだよねと思うような愛の溢れるネタや設定が散りばめられています。
よく知らない方は、戦隊シリーズって数はあってもどれも同じじゃないかなんて思われるかもしれません。が、全然違います。個性豊かな仲間が協力して悪と戦うときうフォーマットこそ全てに共通していますが、各作品毎の大きな特徴、アピールポイントが存在しているのです。
ならば本作のアピールポイントはどこか。それはタイトルにもあるように、レッドとの恋。
アニマライザーのピンクとなった咲良ですが、普通の女子高生がいきなり戦えと言われても無理な話。そんな彼女を熱血指導するのが、リーダーにして十年以上も戦い続けている三十路のおっさんであるレッド。
当初は、その年齢差によるギャップに、暑苦しいくらいの熱血、それに自らに課せられた使命の過酷さもあって反発する咲良ですが、その揺るぎない正義の心と不器用ながらも気遣う姿に、少しずつ惹かれていくことに。
しかししかし、ここで即恋愛とはならないのです。
戦隊ヒーローは子供も見るものだから、その辺の描写は控えめに、なんて理由ではありません。過去には恋愛を全面に押し出した戦隊もありましたからね。
むしろこの、恋愛とはならない理由。子供達が見る本家では、決してできないだろうなというもの。なんとアニマライザーでいるためには、純潔を守り続けなければならないのです。
これは、恋愛できない。そして、子供には説明できない。
ですがだからこそ、世の中に戦隊ヒーローは数あれど、こんな戦隊模様が見られるのはアニマライザーだけなのです。
新米戦士の咲良は、戦いに、恋に、自らの運命に、どう向き合っていくのでしょうか。
世界の平和を守るヒーロー、アニマライザー。先輩からその『ピンクライザー』の使命を引き継いだJKの咲良だが、長年ヒーローたちを率いてきたレッドライザー・焔の時代錯誤の熱血テンションについていけずにいた。しかし彼女は右も左もわからぬ激闘の中、自分でも予想外だった恋の道をも走ることに……!?
薄っぺらな感想になってしまうのは承知の上でまず言わせてください――面白い、とにかく面白いです!
無類の戦隊好きだという作者さんのアツくて深い想いが凝縮された、とても熱量のある物語。けれど花のJK視点で進行する物語は入り込みやすく、私のような“戦隊もの素人”でも始終楽しく拝見することができました。色分けされたヒーローがいて、それぞれの武器や技をもっていて、最後はなんか合体とかしてどかーんとやるやつ、ぐらいの知識量で全然オッケー!変身や固有の技、そして迫力のある合体シーンまでどれもとても丁寧に書かれていて、まるでテレビ放映を目の前で見ているかのように鮮明に思い描くことができます。
主人公の咲良ちゃんは、これまた今時のJKです。大事な役目だと分かっているからやるにはやるけど、自分の青春をぜんぶ使命に捧げることはしたくない、プライベートは大事にしたいという、ある意味戦士らしくない一面も持ち合わせています。でもこれってリアルに考えてみれば当然ですよね。他のメンバーも自分の時間と戦士の使命のバランスをうまく調整しながらやっているところが現実味があって、なんだか周りの人々の中にもこういった秘密の戦士が隠れているんじゃないかって楽しく妄想してしまうくらいでした。
個人的にものすごく焔はかっこいい男性だと思うのですが、やはり三十路の男なんてJKから見ればただのおっさん。熱血で口煩くてデリカシーもない、咲良にとっては目の上の瘤でしかない彼なのに、その純粋な正義感や強い優しさを見ていくうちにいつの間にか咲良の硬いガードも解かれていき……と、きちんと順序立てされたストーリーが読んでいて心地良かったです。ひとつのきっかけで好きになったりしないのはさすが今時JKって感じなのですが、だからこそ彼女がちょっとでもデレたりする場面がくるとスマホ片手に床を転がり回りたくなるほどの尊さがあるんですよね。
敵は人間たちが使っていたモノが凶暴化して生まれたような『ツクモーガ』という存在。無限湧きの雑魚を引き連れて独特な語尾で喋る彼らの姿はなんだか懐かしく、それでいて強敵もいるので油断できないところ。とくにヒーローの力をまだうまく使いこなせない咲良の視点では『雑魚でもやられてしまうのでは』というヒヤヒヤ感がつきまとい、どの戦闘も手に汗握りながら読む羽目になってしまいました笑
しかしこのヒーローたち、その使命を全うするため『自分の恋を封印せねばならない』という決まりがあったりします。この制約が非常に面白く、また少し切なくもあったりして、咲良の恋をより応援したくなってしまうんです。うーん、じれったい!笑
恋に戦い、そして熱い仲間との絆。幅広い要素が盛り込まれていて、読み終わってしまうのが本当に寂しく思ってしまうくらい楽しい物語でした。特撮好きな方が読めば、もっといろいろな気づきが得られると思います。
彼らがテレビに映るとしたら、日曜の朝は早起きしてしまうかも♡――素人がそう思ってしまうくらい素敵な物語、全力でおすすめです!