神の門はすべてものに開かれている。

癒やしの力を持ち、聖女とあがめられるアリスが王太子を刺殺した。彼女は果たして悪魔に魅入られたのか? 異端審問官グレーテルにより記録=アリスの一人語りと、二つの新聞記事によって語られる、異世界歴史ミステリー。

 タイトルの段階でアリスがどうなってしまうかは一目瞭然なのですが、そこへ至るまでの問答が非常にドラマチックでした。問答と言っても、グレーテルの台詞は直接には書かれないのですが、二人のやり取りから舞台となる國での「神」と信仰の在り方が垣間見え、非常にやるせない気持ちになります。

 歴史的にも、政治と宗教の軋轢はひんぱんに起こる出来事でした。いかなる経緯で事件が起こったのか解き明かされた後、キャッチコピーの「嘘をつくのは誰なのか?」という問いかけがズシンと胸に沈みます。

 あくまですべてがアリスの語りと新聞記事のみのため、グレーテルの内心にはハッキリとしたことが描写されないのが、また作品に奥行きを与えていますね。

 序盤に入っていた聖句が、後の方で鋭くテーマに切り込んでくる点も素晴らしい! アリスの過去もふくめ、その残酷な運命があまりにも悲しいドラマでした。