第365話 クリスマス・イブ
クリスマス・イブ
-MkⅢ-
「メリィ~クリスマァ~ス!」
ダイテツに目を向けて動きが固まっている、若きエルフ男女・・・
「あ~、あのね、注目~。」
全員、我に返ったように私へと向き直した。
「えっとねぇ、今日はぁ、君達、4大空中庭園の世界樹の下の4里のエルフ達の、記念すべき初めてのお見合い大会の日です。
それと同時に、此方のドワーフの里の者達にとって、今日は、近隣の孤児院へ対し、子供達の健やかな成長を願うお祭りで、子供達におもちゃ等のプレゼントをして周る日、らしいです。
そこで私が序でにお願いしたのが、この企画に参加するあなた方、私達ハイエルフにとっての子供のような存在の君達全員に、プレゼントを、と言う事に成ったのです。
私が、全員分のプレゼントを用意しましたので、一人一つづつ、私とこちらのエンシェントドワーフのダイテツ、もといサンタクロースが配る事にしました。
女性は私の前へ、男性はダイ・・・サンタクロースの前に並んでね。
中身をぶっちゃけちゃうと、男子用は弓を引く時に使い易く加工したグローブと私が鍛冶技能で打った解体用ナイフ。
女子用は、ダイテツが丹精込めて彫金したアクセサリー、それと、今回参加した女子は、全員私と面識がある子達だから既に魔法を使えるようになって居るけれど、前回授けた魔法は一人一属性だけだったから、他の適性属性一属性の魔導書グリモワールよ、一属性しか適性の無かった子には、属性魔法の代りに、精霊召喚のグリモワールを付けて渡します。
皆喧嘩しない様に速やかに並んでね、全員分有るから誰もあぶれたりしないから。」
「はい、ハイエルフ様。」
と言う返事が会場全体に響く程の大声で、見事なハモリで返って来た。
配り始めると、テディーとタカシがさっきまで居た観戦ブースから出て来るのが伺えた。
「ヤッホー、エリちゃ~ん!」
「エリーさん、こんな企画まで立ててくれてたんですね、すみません有難う御座います。」
テディーがタカシの腕をしっかりと抱えるようにしてご満悦のようだ。
うん、こいつ等も良かった良かった。
配り終わったら私達は、北の大陸に戻ってプレゼント配りをしないと明日のクリスマスにプレゼントを届けきれなくなるので、こいつらをもう少し観察してみたいとも思うけれどそれは叶わないので本体に録画を依頼しておこう。
うーん、想像していた以上にお似合いカップルやな、このとぼけたハイエルフ同士のカップル。
ちょっとだけ妬ける、私にはそうしなりたい相手が居ないけど。
あっと言う間に配り終えた私は、テディーとタカシを弄れなかった為に後ろ髪惹かれながらも、ダイテツのお手伝いに出発したのだった。
そんでもってラインハルト君の起こした新国家の配下の街々を巡って、孤児院にプレゼントを配り回って、最後にラインハルト君に顔を出してやる事にした。
「よっ、久しぶり。」
「こんな真夜中に王の寝室にどうしました?
夜這いにでも来ました?」
「ははは、まっさかぁ~!
私があんたを好きだったらとっくに告白しとくわ、私はそんなにお淑やかじゃねぇからな、はははは~」
「まぁそうでしょうね、今日は何か御用があったのでは?」
「うん、貴方のこの新国家、何つったっけ?
まぁそれはどうでも良いんだけど、その各街々にね、孤児院が結構な数有るでしょう。
あんたなら私に言われずにも才能ある子は貪欲に城や軍に取り入れて行くとは思うけれどさ、孤児院から、結構出るわよ、魔法使いに錬金術師、それとか戦略家の才能が有りそうな子も数名居たわよ。」
「いつそんなの周って来たんです?
それと、その情報は有り難いですね。
貴女に紹介されたあの双子もすごい才能を開花させてますから、貴女ほどの信用出来る筋からの情報は嬉しい。」
「実はね、今は12月25日、この日はこのおっさんの誕生日で、近隣の身寄りの無い子供達にプレゼントを配ってたらしいんだ。」と言って反対側に実は立って居たダイテツを指差す。
振り返ったラインハルトが驚きの声を上げたのは言うまでも無かった。
「うわぁぁっ! な、ちょ、えぇっ?
何ですかこのでっかい人。」
おお、ハッキリ言ったな、でっかい人ってw
「あんたはこの国の王様ってぇ事か、お初にお目に掛る、ワシはここよりも西の方の小さい国、ノールデンっつー所の森の中で生活していたドワーフの民の長、エンシェントドワーフのダイテツと言う者じゃ、初めは、近所の村や街の孤児院だけを周っとったんじゃがこの度このエリーと出会ってとんでもない技術を手に入れての、こうしてこの大陸中を周るようになったのじゃ、これからも毎年配る気じゃから、我々が配るのはこの日だけじゃし、短い時間だけの不法滞在を暗黙の了解として許可頂きたいのじゃが、良いかな?」
「は・・・はぁ、そう言う事でしたら、構いません。
と言うか貴方はサンタって奴でしょうか?」
一瞬、ラインハルト君も転生者なのかと疑ってしまったけれど違ったらしい。
「そのサンタっちゅうのはワシにもよう解らんが、このエリーちゃんから聞かされて、ワシに似とるんかと思って勝手な解釈で納得したぞ、まぁワシはワシでやりたいようにやるだけじゃけどな、がはははは。」
「そうですか、サンタクロースの話は、弟が毎年この時期が近づくと良く話して居たから、詳しい話が聞けるかと思ったのですけど、残念です。」
成程、こいつの弟転生者だったっけ、兄弟には秘密にして無かったんだな。
「まぁサンタクロースに関する事だと少し宗教的な話も出て来るし、あんたから見て他所の世界の話だから、物語にして今度電脳通信で送っとくわ、それで勘弁して、マジ長文になると思う。」
「判りました、エリーさん。
所で、貴女のお耳に入れておきたい事が一つあるんですが。」
耳に入れておきたい事?何だろう・・・
「数年以内に、大規模な戦争が起こりそうです、この大陸ではなく、東の大陸の方で。」
「なっ、いきなりすさまじい情報ぶっこんで来たわね、どう言う事?
貴方の暗部が調べて来たっつー事よね?」
「ええ、あっちの、北の大国、まぁ俺の出身国家でもある、アルファード帝国ですが、現在、父が病床に入ってしまい、弟が強引に王として立って居るのですが、その弟がですね、どうも軍備を突如として大幅に強化を始めたらしいのです。
恐らくは、来春に成るか再来春かのいずれかで、レクサスかグローリーに派兵する線が濃くなって来たのですよ。
一応エリーさんの耳に入れておいた方が良いかと思いまして、もし敵うなら、願わくば弟を止めて頂きたい。
お願いします。」
成程な、未だ復興中のこの国の国力では、止めに入るのは不可能かもしれない。
かと言って、継承権を放棄して旅に出た彼が一人で出向いた所で聞く耳も持ってはくれないだろう。
ラインハルトからは、切実な、真剣な思いが伝わって来た。
「もし本当に戦争になるとしたら、それは私が全力で止めるさ、でも、もしもそうなった時は、弟君の命の保証は出来ない、それでも良いの?」
後は、私に相談したラインハルトの覚悟だけだ。
「・・・・・はい・・・・・・僕のせいでも有るんです、だから僕が止めに入って然るべきなのでしょうけれど、僕自身の民を抱えてしまった以上、勝手は許されなくなってしまった。
ならば、最も信頼のおける強者の貴女にしか、頼めません。
弟を、よろしくお願いします。」
深々と頭を下げたラインハルトの足元に、数滴の水が落ちる・・・彼もきっと、身を切るような思いなのだろう。
「判った、泥船に乗ったつもりで任せなさい!」
と少々陽気な感じに、空気を変えようとして気を使ってやる。
「はははは、泥船じゃダメじゃ無いですか、せめて笹船位にして下さいよ。」
言い返しをしてきたラインハルトの顔は、涙と鼻水で見るに堪えない事に成っていたが、一番良い表情だった。
「ちなみにあなたは他所には攻め込まないだろうけど、こっちで戦争が起きそうな時は直ぐに私を呼びなさいよ。
特にこの国が攻め込まれてたりしたら一番戦闘特化した空中庭園を操るハイエルフを派遣してやるから。
あいつ、飛空艇は空間破砕砲実装のジェット式飛空艇だわ、庭園全周囲にレールガン実装しろなんて言い出す程の戦闘狂だしな、敵に回った奴等が可哀そうだわ、何も出来ない内に滅ぶわね・・・」
「それって、魔王ですか?」
ボソッと呟いて見たら、今度は青く成ってるラインハルト、良い感じに百面相が見れたわ。
色男の泣き笑いに引き顔、ホントに良い物見れたわ。
宇宙戦争時代の科学者、異世界へ転生する【創世の大賢者】 赤い獅子舞のチャァ @akaishishimai
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