最終話 卒業
一心は立ち上がった。
「!?なぜだ!なぜ...ム」
口の中に銃口を突きつける一心。
「...」
「フゴ!フゴゴゴゴッ!」(お前、英樹と同じ薬を!)
一心は赤く染まりつつある。まさかかつて出会った赤い影に自分がなろうとは。
赤い影の正体は必ず任務を遂行する念である。それは死してなお強まればその念は必ず遂行する。
ごめんな、雫、春、そして美帆。俺は幸せだったぜ。
赤い影は燃え盛り、アルバートを炎の渦で包み込ませた。
「グワ〜...ハッ、ハッ、ハッ...」
その炎はその部屋をも包み込み、火が広がる。
▪︎
そこへ向かう三人。煙の匂いが漂ってきた。
「本当にいるの?美帆」
「いるはずだよ、少しだけの記憶では...」
「なあ、変な匂いが...」
目の前は火の景色。炎が彼女ら三人へ向かってくる。
「やべえよ!やべえよ!」
「待って!私、行くわ」
「はあ!?どうやって行くんだよ、美帆!」
お願い、SHINE。最後のお願い、一心くんを助けて...
『いいわよ』
(え!どうして?!)
『私の人格は不完全なの、あなた以外の器に乗れないことがわかった。もうあなたとしか共生できないなら、一緒に死んでやるわ』
「雫、手伝って!」
「うん」
バキュームで火を吸い込み、テレキネシスで火のトンネルを作った。
「行って!美帆〜!!」
美帆はその先へ走った。ああ、あんなに小さくて可愛かった親友が優しく強くなったね、美帆。
一心が倒れていたところに辿り着いた。赤く染まる一心の影を発見した。
「一心君!」
赤い影は微動だにしない。
美帆は走り出し、熱くなった彼を抱きしめて、口元に...
一年後。
あの事件はあの後すぐにニュースで、ネパールにあった殿下財閥の企業が燃えてなくなったと報道され、その事故により社長であった美帆の父が亡くなったとされた。
そして、美帆は殿下財閥の正式な女子高校生社長となった。美帆をめぐって多くの男たちが押しかけてきたが、彼らを薙ぎ払うほど彼女は強くなっていた。
雫は春と付き合い出し、かなりラブラブであった。超能力は未だに持っていると思うが、最近使ってないと言って来た。なんか、卒業後一緒に同じ大学へ行き、同棲するらしい。
そして、あの後奇跡的に生き残った。俺は名前を佐藤一心となり、英樹さんの本当の名字で活動している。雫の母に全ての真実を話したが、彼女はいたって笑顔で...
「あの人の夢が叶ったみたいだね」
とだけ、伝えられた。
俺もきっとそう思う。え?美帆との繋がりだって?美帆とはあのキスの後、特に何事もなく日々を過ごしたよ。まあ美帆から好きって言われた時はどうしようかと思ったが、一年間待ってもらった。今まで殺してきた人の弔いや各国の機密事項をもとに戻してきたりとあの組織のやってきたことを無かったことにはできないけど、できるだけ平和へ近づくように世界中を旅してきた。そして、あの高校が卒業式を迎えたと聞き、日本へ帰ってきた。
噴水を歩いている美帆。スナイパーライフルで彼女のこめかみを撃ったつもりだったが、彼女はすぐに察知し、避けた。俺はすぐに彼女の元へ駆けつけた。
「美帆、今日卒業だったのか?」
「そうよ、懐かしいね」
「...ここでお前を撃って、隣の超能力少女に阻止された。今は美帆がすぐに避けて察知した」
「ふふ、私強くなったでしょ〜」
「ああ、強くなったよ。さらに可愛くもなった」
美帆は顔を赤くした。
「...まだ俺は全てを理解してない。ずっと暗殺や殺し屋一筋だった」
「うん」
「でも、君と出会って、運命の歯車が狂い出した。俺はお前のことが...好きになったみたいだ」
「私もよ」
Fin...
エスパーキル アカサ・クジィーラ @Kujirra
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