第14話 サソワレルコウハイ
今日は雨が降っていた。
せっかくの土曜日だというのに朝からずっと雨だった。今日はこのままずっと家の中で過ごそうかと思っていた。
あのメッセージが来るまでは。
『初めまして。秋山望実のカノジョです。小野寺夏海さん、あなたと話したいことがあるので今から送る住所まできてもらえませんか?』
『望実の重大な秘密です。あなたに相談したい事があります。望実には言わないで下さい』
今朝、突然こんなメッセージが送られてきたのだ。相手の名前はLとアルファベット一文字で、写真も登録されていない。いかにも怪しい。
でも、このLという人物は私の名前、私が秋山さんと知り合いである事を知っている。そして秋山さんの重大な秘密と相談したい事……。
こんなふざけたイタズラみたいなメッセージだが、どうしても私は気になってしまう。
結局私はそのメッセージの誘いを受けてしまった。
「ここ……かな?」
雨の中、傘をさして向かい辿り着いたのは一軒の古そうなアパートの前だった。
「あのー、もしかして小野寺さんですか?」
アパートを眺めていると後ろから声をかけられる。
「は、はい。そうですけど……もしかしてあなたが……」
振り返ると傘をさした女性が立っていた。
長い黒髪に大きくて丸い可愛らしい目、同性である私が見ても可愛いと思ってしまうくらいには整った顔立ちだった。そしてどこか優しそうで大人しそうな感じもする。
「はい。初めまして……Lです」
「どうも、小野寺です」
「すみません、突然呼び出してしまって。連絡先は望実から聞きました。望実がよく話してたので会ってみたいと思っていまして」
彼女はそう言って頭を下げる。言葉遣いも丁寧だし、秋山さんははこういういかにも男が好きそうな女って感じのが好きなんだと思った。
「それであの……こんな天気なんでよければそこ私の家なので中で話しませんか?」
もし変な人だったり、怖い人だったらどうしようかと思っていたが、どうやらそんなことはなさそうなので私は承諾することにした。
「いいですよ。雨かなり降っていますもんね」
「本当ですか? ……よかった」
私は彼女に案内され、アパートに入る。
「ごめんなさい、こんな狭い部屋で。とりあえずお茶入れるのでくつろいでいてくださいね」
「ありがとう……ございます」
外観はボロかったが中は意外と広く、リビングに案内されたが、扉が閉まっているが奥にも部屋があるようだった。
部屋にはほとんど物はなく、テーブルとテレビ、エアコン、クローゼット、そしていくつかの水槽しか見当たらなかった。
「あ、なにか飼ってるんですか?……ってきゃあっ!!」
私は水槽の中を覗き込むと、そこにいたのは見たことない大きくて毛深い蜘蛛だった。虫が苦手な私は驚いて声をあげてしまう。
「ふふ、そんな怖がらなくても。ローズちゃんは大人しいから大丈夫ですよ」
そう言いながら彼女がお茶を淹れて戻ってきた。
「ローズちゃんって……この蜘蛛ですか?」
「ええ、ローズヘアータランチュラのローズちゃん♡ ……ちょっと安直すぎですよね」
「そ、そんなことない?と思いますよ……それにしても色んなペットがいるんですね……」
私は正直全く理解できないが、この様子だと可愛がっているようなのであまり顔に出さないようにしないと。
「他の子達もみます?今潜ってて隠れてるんだけどすごく綺麗な子がいて……」
「い、いえっ! ……先にお茶いただきますね!」
またあんなの見せられたらたまった物じゃない。私はカップを掴み、中の紅茶を飲む。
「……どうですか?」
「はい、とてもおいしいです!」
「よかった。喜んでもらえて。……じゃあそろそろ本題のお話聞いてもらえるかな?」
「……はい」
彼女はそれまでの穏やかそうな表情から一変、険しい表情になる。
これから聞かされるのだろう。秋山さんの秘密を……。
キョウキナカノジョ〜彼女が俺の嫌いな人を××しまくってヤバ過ぎる〜 カイマントカゲ @HNF002
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