予言

早く巫女の仕事なんかやめればいいのになって思ってるんですけど。

なんかやめないんですよ。

意地っぱりっていうか。

色々あったのに懲りずに続けているんです。



神主さんの次男さんがいらっしゃったときもそうなんですけど。

イケメンだそうです。

お姉ちゃんの言い方だと「イケメンっぽい人」です。

その人が、なんか神社に用事があって通うようになったんですけど。

何かとお姉ちゃんに話しかけてくるようにもなってきてて、ちょっと嫌だなぁって思ってたんですって。

私は、そのまま嫌になったらいいのにって思ったんですけど。

境内のお掃除とか社務所勤めだとかの隙をついて寄ってくるらしくて。

適当にあしらってたんですけど、少ししたら急に距離を詰めてきて。

次男さんがお姉ちゃんの肩に触ったんですね。

そしたら、静電気の強いのみたいにビリビリってなって。

そしてブワッていろんな映像が、ババーッて見えたらしくて。


誰かがバイクでどこかの峠道を走ってて


ハンドルとかメーターとか、ヘルメット越しの景色があって


そのバイクを黒いスポーツカーが追い抜いて


そのスポーツカーがカーブを曲がりきれなくてごわしゃぁって事故って


バイクもそのスポーツカーに吸い込まれるように近づいて


ベッドの上で誰かが目覚めて


電源の入ってないテレビに、包帯を巻いた次男さんの顔が映るっていう


そういうのが、なんか、ガーッて見えたらしいんです。

その次男さん、バイクが好きらしくて。

県を一つまたいだ所に住んでるのに、神社までバイクで来るらしいんですね。

なんかお姉ちゃんも、後ろに乗りなぅよぅ♪って。

どこでも連れてってあげるぅよぅ♪って何度も誘われたらしいんですけど。


あ、次男さん、近い将来バイクで事故るってお姉ちゃん思ったらしくて。


それでお姉ちゃんは、バイク気をつけてください、って声をかけたんですって。

そしたらなんか、それが嬉しくなっちゃったみたいで次男さんは。

余計にうっとおしいことになって全然話にならないので、そういうことも含めて神主さんに伝えたんだそうです。

神主さんも色々と勘の働く人なので、お姉ちゃんの話をちゃんと聞いてくれたみたいで、次男さんにだめだぞって言ってくれたみたいです。



それから少しして、その次男さんが事故に遭ったって、神主さんから教えてもらったみたいで。



え、バイク乗っちゃった?ってお姉ちゃん気になったんです。

でも確かに、急にそんなバイクで事故るなんて言われても信じるわけないし。

それで、神主さんから事情を聞いたんですって。

私はお姉ちゃんから聞いたんですけど。


なんかそれが、お姉ちゃんらしいなって、私は思いました。


次男さん、ちゃんと言うことを聞いて電車にしたり、奥さんの運転で出かけたりしていたそうなんですけど。

ある日、義理のお母さんが入院したみたいなんですね。

奥さんは自分の車で病院に駆けつけて、次男さんは仕事が終わってから行こうと思ったんです。

でも、その病院までの道に峠あるよって、奥さんから連絡を受けてたらしいんです。

それで次男さんは、ちゃんと警戒してバイクには乗らなかったんですって。

で、お友達に事情を話して車を借りたそうなんですけど。




それが、黒いスポーツカーだったんだそうです。




なぜかお姉ちゃん、バイクに乗ってる人の視点で見えちゃってたみたいで。




あとはお姉ちゃんが見えた通りに。

つい急いでスピード出しちゃって曲がり損ねて事故って、バイクの人が通報して助けてくれたけど入院した、みたいな感じです。

お姉ちゃん、ちゃんと伝えられなくてごめんなさいって神主さんに謝ったそうなんですけど、神主さんが、いやいやいやって手を振りながら




「いい薬になったろうよ」




っておっしゃって笑ってたそうです。

ついでに言うと、神主さんから奥さんに、次男さんの女好きなところもしっかり情報提供されたみたいで、入院中にだいぶやられたらしいです。




あ、お姉ちゃんですか?




まだバイト続けてます。

おわー変な感じするー寒みぃーって言いながら、さっき神社から帰ってきましたよ。




たぶん風邪だと思います。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

巫女のお姉ちゃん 小丘真知 @co_oka_machi_01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ