第34話 番外編 高校最後の体育祭
亘一達3年生にとって高校最後の体育祭を迎えた。男子が30人いる亘一達のクラス3年3組は男子バスケに5人、ソフトボールに9人、フットサルに5人×2チーム、リレーのアンカー1名は他競技に出さずに温存と決め、大縄跳びと綱引きと玉入れは男女混合で掛け持ちをと出場メンバーを決めていた。女子は10人しかいないので、ドッチボールと女子バスケを掛け持ちしながら人数調整をかけている。
「あれ、今年は亘一、フットサルか?去年は身長活かしてバスケだったよな?」
と同じくフットサルになった大崎が聴くと、
「うん、亜理子がドッチボールで外競技だから俺も外のにした。亜理子の頭にボールぶつける奴いたら成敗しなきゃいけないから、見張る。」
と亘一は目つき悪く答えた。昨年、姫が頭にボールをぶつけられ、頚椎捻挫をしたのは有名な話だ。一部ルールが改定になり頭部に当てたものは退場、欠員のまま戦わなければならなくなったから大丈夫だとは思われるが、このままだと姫にボールを当てただけでそのまま亘一に体育倉庫でバレーボールの海に沈められそうだなと大崎はゾッとした。
グッパーで分けただけなのにどうしてこうなるかなと大崎はため息をついた。勝ち進んだ結果、男子フットサル決勝で3組の2チームが直接対決する羽目になってしまったのだ。
相井、榎本、佐藤一、矢田、吉田チームと大崎、佐藤亘一、佐和山、林、森下チームの対決だ。
「あれ、こっちのが勝ちじゃん?」
よろしくお願いしますの整列をした時に亘一がポロッと口を滑らせた。
「サッカー部の吉田はキーパーで、佐藤くんはディフェンダー、少年サッカーで戦ったことあったけど、相井と矢田もディフェンダーだったし。」
相変わらず榎本の名前は覚えてなく、関心も無いようだ。一応、彼は応援部だ。その場の空気が凍りつき、亘一の口を塞ぐために大崎が
「こっちはフォワードの佐和山がいゴフッ」
そこでとりあえず頭を叩いて止めた。
試合開始の合図とともに佐和山と亘一がボールを相手コートへと運び、シュートをするもすぐさま吉田にセーブされ、
「キーパーが守るだけだと思うなよ!」
怒号とともに吉田がコートからロングシュートを決める。
「手がっ、イラストの締め切りがっ、俺の手がっ、」
亘一チームのゴールキーパーの林は絵師として稼いでいるらしい。締め切り直前の突き指は痛手であろう。
「ディフェンスが完璧だと点が入んないんだぜ!」
と佐藤くんが必死に守り、森下は脚の付け根を押さえてうずくまる。
「声だしてこー!」
声が取り柄の榎本が雰囲気をあげる。
「くっそ、抜けねー」
少年サッカーチームではフォワードだった亘一も苦戦だ。
「お前の動きなんかお見通しだ!」
相井と矢田が張り切る。
「足がー」
「キャーサワくん!」
佐和山が足をつる。
1対0で勝利したのは相井チームであった。
勝利に沸く相井チーム。
と、
「サワくん、大丈夫?足治った?」
ストレッチをし、経口補水液を飲みながら足を治す佐和山の近くに寄り添う紀ちゃん。
「大崎先輩ー、真帆はこっちー、キャー手振ってくれたでしょ!真帆のダーリンなの。素敵でしょ!」
後輩とおぼしき女子が大崎に黄色い声をあげた。
「なんだ?この敗北感。俺たちが勝ったんだよな?」
とよく通る声で榎本が呟くと、その前を姫が横切った。
「亘一さん!おつかれさまです!」
姫が亘一へとペットボトルとタオルを差し出した。
「さんは付けなくて良いっていつも言ってるだろ。亘一でいいって。」
「えっ、ちょっと、でも、なんか。」
姫は口ごもって手を振りながら動揺した。
「まあ、そのうち慣れて。」
そう言うと亘一は姫の頭を撫でた。そして、
「フットサル優勝出来なかったなー。」
と残念がった。
「大丈夫です。亘一さんのカッコいいとこいっぱい観ちゃいましたし。亘一さんサッカーも強いんですね!」
姫が可愛い声で、真っ赤な顔で亘一を褒めた。
「小学生の頃は少年サッカーチームに入ってたんだ。そうだ、受験終わったら、サッカーの試合観に行く?」
「本当?嬉しい!いろいろ教えて欲しいです!」
いろいろ教えて欲しい…。サッカーのルールとかを試合を観ながら教えて欲しい。そう
フットサルの活躍もあって3組は総合2位となり、表彰台には委員長の榎本が向かう。何故か涙目だ。男子達数人の顔が冴えない。担任が優勝でも狙ってた?そんな熱いクラスだったかしらと認識を新たにしたぐらいだ。
そして相井は、
「大崎の奴、あとで絞めてやる。いつの間にうちのクラス、リア充増えてんだよ!」
と吠えていたらしい。
…完ですかね。今のところ。
落下速度を計算できない恋 柴チョコ雅 @sibachoko8
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