第27話

瑠偉ちゃん、人とのご縁は不思議ね。一本の紐で作る花結びみたい。私の母とあなたのおばあ様。あなたのお母様の阿紀さんと私。私と瑠偉ちゃん。奈緒と瑠偉ちゃん。それぞれが出会ったことで、何かしら変わって来たように思います。

私は五十代のおばさんだけれど、まだ、できることがある、人は変わることができると思っています。

また、お会いできることと思います。その日を楽しみにしています。


             泉澤久美



「どう、読み終わった?」

良子さんに聞かれ、

「はい。ありがとうございました。」

と、お礼を言った。

「おばさんのことが気になっていたので、事情がわかって安心しました。」

「そう。私ね、四月から学校に行くのよ。美容師の免許にくわえて理容師の資格も取ろうと思ってね。」

「今からですか?」

「そう。目の前に新しいアパートできるのよ。若い男性も増えるかもしれないし。」

良子さんは、笑った。

「おばさんだけれど、まだまだやるわ。久美ちゃんに負けてられないし。そうそう。ぜひ、あなたの髪のお手入れさせてほしいな。考えてみて。」

「喜んで。また来ます。」

居心地がいい場所がもう一つできた。

春の訪れとともに。






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花結び 簪ぴあの @kanzashipiano

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