第26話

瑠偉ちゃん、奈緒から聞いております。大学合格、おめでとうございます。文学部に進まれるとのこと。本当によかったですね。阿紀さん、きっと喜んでおられることでしょう。あなたが、自分の母校に入学されること以上に、希望通りの学部に進まれることを喜んでおられるはずです。

阿紀さんの才能をあなたが受けついでいると私は思います。阿紀さんは、お母様の期待を背負って無理をなさった経験がおありだったから、あなたの希望を尊重なさったのでしょう。あなたが思っているほど、阿紀さんはわからず屋ではないと私は信じています。

瑠偉ちゃんの手紙がきっかけで、奈緒とたくさんのことを話しました。最初は

「お母さんの家の近所の子じゃない?」

から始まって、

「瑠偉ちゃんならよく知っている。とてもいい子だから力になってあげて。」

というふうに。もちろん、瑠偉ちゃんから聞いたことを奈緒に言っていませんし、奈緒が瑠偉ちゃんにどんなことを話したのか聞いていません。

ただ、奈緒は中学、高校時代、私にどうして欲しかったか、どんなことで悩んだか、当時は言えなかったことも詳しく聞かせてくれました。私は、母親として自分が至らなかったことをしっかり受け止めて、奈緒とのこれからの時間を大事に過ごそうと思いました。

だから、一大決心をして、先祖代々受け継いだ家を壊して、アパートに建て替えることにしたんです。これから奈緒夫婦のじゃまにならないように、でも奈緒の手助けができたらと思っています。



おばさんらしいな、と思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る