第4話 あるお願い
翌朝、社会人チームの試合のために支度をしていると、山上夫妻から電話がかかってきた。
内容は、ある人物が、夫と別れてしまい、子育てが苦しいので、養子縁組みとして子供を育てて欲しいという話だった。
俺はそれでも良いと思っていたので、ありがたいと思っていた。
けど、祐一は許してくれるだろうか?と不安だった。
そして、千春から電話を変わるとのことで話す相手がその人になったのだが、名前を聞いて驚いてしまった。
その相手とは、一ノ瀬だった。
大学時代は、ショートカットの二塁手だったし、アイドルかなぁとさえ思ってはいたけれどまさか女性だったとは思わなかった。
そして、一ノ瀬改め不知火優希が話してくれたことをメモした。
涙ながらに語ってくれた内容はとても衝撃だった。
今の旦那である不知火さんは、不知火運動具店というお店の社長の息子であり、優希も中学時代から通ってるお店だった。
そして、大学の遠征で彼と出会い、一目惚れしたとのこと。
良い男の人と思っていたが、子供を妊娠したと伝えたら、「はぁ?子供?要らないわ、育てたいなら一人で育てたら?」と言われたらしい。なんとも酷く悲しい話であり、不知火さんに怒りが沸いた。
そんなこんなで話をしていると、試合の通達の連絡が来て、メンバーの子が風邪引いたから試合出来ないとのことだった。
相手方も理解して下さったので大丈夫ですということあり、仕方ないと思ってたところに
祐一が帰ってきた。
「あっ!お帰り」と声掛けたけど、どこかおかしい感じを覚えた。
その理由は、電話の主である優希の声が聴こえた時だった。
祐一は、頭を抱えた。
大丈夫?と聞いたけど、大丈夫と言われたので、その話は終了した。
すると、祐一が突然電話代わってと言い出した。
とりあえず代わったのだが、やたら暴言を吐く祐一の姿があり、驚いた。
「もしもし、久しぶりだね!真に何話してたの?ってかさぁ~優希あんた何様なの?
昔からおいらを苛めてたやつが良く言うね~泣けば良いとか思うなら、子供が悲しくなるから止めなよ?母親って辛いのは分かるけど、それは、将太君の為にならないよ」と
すると、優希が、「まゆかちゃんになんでそんなこと言われないといけないの?」と言い、言葉の応酬が繰り広げられ、優希は先ほどの涙声から一転していた。
俺は、まゆかちゃん?となってしまい、祐一に聞いたけど、バレたかとしか言わなかった。
そして、祐一は、元の名前は、松山まゆかという名前だったことや姉が2人いたことや
弓岡来斗の元恋人だったことなど話してくれた。
姉が二人?まさか?となって、高校時代に洋一から聞いた話を思い出した。
出来の悪い妹がいると聞いたことはあったけど、まさか祐一だったとは!
俺は、あまりに暴言を浴びせる祐一やその過去がわかり、嫌気が差し別れた。
ちなみに、優希と将太君は、山上夫妻が面倒を見るとの約束で決着した。
将太君は6才で、山上夫妻に懐いていたこともあり、元々使ってなかった空き部屋に住むことになった。
一方の祐一は、俺と別れた後に風の噂で、海外で生活しているという話を耳にした。
そうして、37才の冬が終わった。
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