人の顔そのものに感じるある種の怖さ

 自殺者の頻出する山へ、遊びに行く小さな少年ふたりの、ある日の出来事とその後のお話。

 現代もののホラーです。書き出しの一語からして「首つり山」と、絶妙な不穏さがたまらないお話。
 単に不気味なだけでなく、この身も蓋もない名前の「ありそう感」がもう絶妙で、綺麗にお話に乗せられてしまいました。

 さすがに作中のそれのように「首吊り自殺の頻出する場所」というのは現実にそう多くはなくとも(そう信じたい)、なんかこういうストレートなネーミングで、手近な場所を「自分たちにとっての名所化」するようなところありますよね、子供って。

 こういう細やかな質感というか、手触りの現実味がもう本当にすごい。
 例えば中盤に起こる不気味な出来事も、それ自体よりもその後の対処のまずさと、その後悔を長年ずっと引きずるような描き方をされていて、否が応でも物語に釣り込まれてしまいます。
 ふとした出来事や要素の、その小道具的な使い方がいちいち心地よい。

 後半の展開の意外さと、でもそこに感じる説得力、なによりそれを引っ張ったままの幕引きが最高でした。
 決定的な何かを書くわけでなく、ただ「その先」を匂わせる感じ。
 堅実な読み口が楽しいホラー作品でした。