第10話 能力者達

「お前達もレベルアップしたようだが、何でかわかるか。」

「それは特訓したからでしょう。」

風の能力の少年の問に恵姉ちゃんが答えた。

「そう思いたいところだが、オレ達はいじめられて能力を発揮するんだ。組織の長が言っていたから間違いない。長はオレ達を新しい兵器にしようとしている。」

恵姉ちゃんが体をこわばらせたのがわかった。僕はまだ息がきれていた。しかし恵姉ちゃんが何かを感じとっているのはわかった。恵姉ちゃんの体がふるえだした。

「あなた大変な目にあったのね。」

恵姉ちゃんは声もふるえていた。どうやら心を読み取ったらしい。

「私もいじめられていたわよ。あなたの言う通りよ。その時に能力が発現したのよ。だから私は人の心が読めたり茫然自失にさせたりできるの。」

今度は僕の体がふるえる番だった。あんなに明るい恵姉ちゃんがいじめられていたなんて初めて知った。風の能力の少年も息を呑んでいる。

「私がこの世界を変える。」

恵姉ちゃんの声はさっきまでと打って変わって力強いものだった。恵姉ちゃんの体が光りだした。優しい波動が広がっていく。僕は綺麗な光だなと場違いなことを考えていた。僕の心も体も癒されていた。

「恵姉ちゃん。僕の能力も使って。」

僕は走り寄って恵姉ちゃんの背中に触れて能力を送った。光の力が強く、さらに広がっていく。気づくと風の能力の少年も力を貸してくれていた。三人の能力は日本だけでなく海を渡り全世界を地球全体を包んだ。温かい、優しい波動が全てを包んだ。


そして僕たち三人の能力はすべて使い切り三人も光となって消えた。


天国で僕たち三人は平和に暮らしていた。ここは戦争もテロも詐欺もない平和な世の中だ。

僕は言った。

「下界も少しは良くなったのかな。」

「私達三人の能力も及ばずという感じね。」

「でも超能力兵器は作られなかったよ。」

三人は破顔した。

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