第4話

  猫にすごく似た彼女はかわいかったが、他の男子も目を奪われている。目力が強く、オーラが漂っているからだろう。それに、童顔だから大学生とは思えないかわいさだ。

 だが、このまま授業に行ってクラスの奴らにこの莉音を見せるのかと思うと癪だ。別に俺は彼氏でもなんでもないが。


「お昼を買いにコンビニに行ってきます」


俺は一度帽子を脱いで部屋を出る。元々コンビニには行こうとしていたから嘘ではない。俺は早足で近くのコンビニまで向かい、適当なパンを手に取ってから普段は絶対に見向きもしないコーナーに足を向けた。


「どれだ……?」


 俺は棚の前で首を傾げる。とりあえず、パッケージにメイク落とし、と書いてあるやつを買えばいいのだろうか。

 俺は恥ずかしさを堪えてレジにパンとメイク落としのシートを出して会計をした。


 教室に戻ると、彼女は帰る、というか次の教室に行くところだったらしく廊下ですれ違った。メイクはそのままだ。俺はコンビニのビニール袋からメイク落としのシートを取り出して手渡す。


「これ、よかったら使って」


一瞬キョトンとした顔を見せたが、俺が渡したのが何だかわかると彼女は表情を輝かせた。


「ありがとうございます! え、このお礼をします」

「気にしなくていいよ」


俺はそう言ったが、彼女は譲らない。


「気になるんです!」


 拳を握りしめて力説された。


「じゃあ、今度一緒にランチにでも行こうか」

「え、それでいいんですか?」


彼女は不思議そうに顔を傾げたあと、チラリと腕時計を見て、飛び上がる。


「もう行かなきゃ! これも使わせてもらいますね!」


階段へ駆けていく彼女を俺は無言で見守っていた。

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ハロウィンと恋の前進 Happy Halloween!! 郷野すみれ @satono_sumire

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