第3話

これまた知り合いの女の先輩であるりなさんが来た。躊躇いなく猫耳のカチューシャを着ける。


「莉音ちゃんかわいい!」


 目を輝かせて褒めてくれる。カバンの中からポーチを取り出す。今日二度目の嫌な予感。


「目を閉じて」


 持っているのは目の上に線を引くアイラインですよね。仕方がなく目を閉じると、目の上を冷たいものがなぞった感覚がした。その後、鼻と頬にもブラシの感覚がする。くすぐったくて笑い出したくなるのを堪えた。


「はい、できたー! 猫っぽくなったでしょ? 莉音ちゃん、化粧映えする顔だからね」


 私が目を開けると、シンとして、息を飲む音が響いた。


「え、ちょっと、どうなっているんですか?」


 ハルさんがスマホを自撮りのカメラにして渡してくれる。そのまま見ると、そこには猫耳をつけ、アイラインで猫目っぽくなった私がいた。鼻も少し赤くてマジで猫。これが私だと信じたくない。


「どうやって帰れと⁈ というか、この後授業があるんですけれど⁈」


 がっつりメイク落としのリムーバーなどを使わないと落ちないレベルだ。


「いいんじゃない? かわいいし。大丈夫だよ」


 りなさんに慰められるが、というか本人が元凶だが、そういう問題ではない。

 私は机に沈み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る