第2話

毎年のように、ハロウィンの日はどの先生であっても仮想の小物を用意してくる。英語圏は日本よりもハロウィンの文化が強いからだろう。この先生に当たった年は前にもあって、男子は帽子、女子は猫耳だった。俺が壁に体を寄せれば彼女を逃すこともできたが、そうしなかったのは、彼女が猫耳をつけた姿を見てみたいという不純な動機からだ。

 2人で椅子に座る。隣の彼女はまだぶつぶつ文句を言っている。


「でも、別に私がこれをつけなくてもいいじゃないですか」


 俺はしましまのとんがり帽子をかぶってから、元凶となっている猫耳のカチューシャとやらを手に持つ。こっそりと手を彼女の頭の後ろに回し、被せる。成功。


「ちょっと! 何ですか‼︎」


 彼女は気が動転して日本語になっている。いくら目を釣り上げてこちらに向かって怒っても、猫耳をつけているから全然怖くない、というよりむしろネタのようになっている。俺は自制が効かず、思い切り吹き出してしまった。

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