第34話 力の代償 6

「後は?」


「ああ。コイガミネとウサミか」


 コイガミネとウサミ……あの小さな女の子と本ばかり読んでいる女の子か。


「……コイガミネは、貴殿が着てからずっと部屋に引きこもっている。だから――」


「まず、無理だと」


「すまない。だが、ウサミは……とりあえず、ウサミの部屋に行ってみよう」


 リーナとユウヤはとりあえず、ウサミというあの本ばかり読んでいる少女の部屋の前に言った。


 リーナが部屋をノックする。


「おい! ヒナノ!」


「はい?」


 普通の返事だった。程なくして扉が開く。


「あ、団長。どうしたの?」


 あっけらかんとした様子でヒナノと呼ばれた少女……本ばかり読んでいた少女は、リーナを見る。


「貴殿に頼みがある。その……」


 そういってリーナは申し訳なさそうにユウヤの方を見る。ユウヤも申し訳なさそうに頭を下げた。


 しかし、ヒナノは何の反応も示さなかったようだった。恐怖するわけでも、脅えるわけでもなく、キョトンとリーナとユウヤを見ているだけである。


「何? 姫様が言っていたその人に鎧を作るってヤツ?」


「ああ。そうなんだが……」


「いいよ。僕は別に」


「そうか……やはり無理――え?」


 驚くリーナとは対照的にヒナノは呆気羅漢とした表情でリーナとユウヤを交互に見ている。


「……いいのか?」


 信じられないという表情でリーナはヒナノを見る。


「うん。いいよ。ただ……」


「ただ?」


「僕とその巨人さんの二人きりならいいよ。団長が着いてこないならね」


 ヒナノはニヤリと微笑む。リーナはキョトンとしていたが、すぐに嬉しそうな顔になってヒナノに頷く。


「ああ! それくらいならお安い御用だ! よかったな! ユウヤ殿!」


「え? まぁ……」


 ユウヤにとっても不思議だった。ずっと本を読みふけっていた少女。ユウヤにも興味がないようだったが、それなのに、どうして……


「じゃあ、私はここで失礼する! ヒナノ! ユウヤ殿を頼んだぞ!」


「はいはい。わかりましたよ」


 そういって嬉しそうにリーナは廊下を歩いていった。


 ユウヤはゆっくりとその巨体を目の前の小さな女の子に向ける。


「えっと……」


 と、女の子はユウヤに手を差し出してきた。


「僕、ウサミ・ヒナノ。よろしくね。巨人さん」


「あぁ、どうも……」


 戸惑うユウヤを見てニヤリとヒナノは微笑んだ。


「ふふ……まぁ、話は僕の部屋の中でしようよ」

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怪物勇者と異世界聖女騎士団 ~化物の俺が幸せを掴むまで~ 味噌わさび @NNMM

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