第33話 力の代償 5
次の部屋はステラの部屋だった。
「ステラ! 私です!」
リーナが扉越しにステラを呼ぶ。と、今度は扉がガチャリと音を立てて開いた。
「あ、ああ……リーナ」
扉の隙間越しに、憔悴しきった顔でステラがリーナに微笑みかけた。
「大丈夫ですか? なんだか顔色が……」
「ええ……大丈夫よ……私、前にも言ったけど、血を見るのが苦手で……」
「あ……そうでしたね」
「で? 何の用?」
「その……姫様の言っていた――」
といって、リーナが隣にいるユウヤに目をやったときだった。
それまで大きすぎて気付いていなかったようでステラはユウヤに気付くと顔色を変える。そして、そのまま口元を押さえた。
扉を閉める。直後に苦しそうに悶絶する声が聞こえてきた。
「ステラ!? 大丈夫ですか!?」
「……ごめんなさい。私は……うぐっ……」
吐きながら泣いているようだ。悶絶する声の合間にしゃくりあげる声が聞こえる。
「……わかりました。ほかを当たりますので……」
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
泣きながら謝る声を背に、ユウヤとリーナは次の部屋に向かうことにした。
「ステラは……優しい人なんだ。でも、血を見るのが苦手で……」
「そうか……しかし、そんな人が、なんで騎士団に?」
「……私たちは寄せ集めなんだ。私以外は元々兵士ですらない。クラリスは街の居酒屋の娘だし、ステラは貴族の出身だ……」
「あ……そうなんだ……ごめん」
「あはは……ユウヤ殿が謝ることではない」
もし、リーナの言っていることが事実だとしたら、騎士とは程遠い存在だ。
むしろ、普通の女の子達なんだろう。あの年頃だとユウヤが人間だった頃の年齢と大して変わらないはずである。
そんな女の子達がユウヤのような化物を見て平気でいられるかと聞かれれば……そんなわけもないと考えられるわけで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます