第29話 図書館

俺は図書館らしい場所に来ていた。


「図書館の利用料金として銀貨1枚お支払い下さい」


「銀貨······?ああ、こいつの事か」


さっきの奴らから奪ったのは武器とかもあったが、金や銀もだった。これが硬貨なのか。


「ん」


「はい、では図書館の説明を致します。まずここでは飲食は禁止されております。その場合は外に出て、再度入場する時は銀貨1枚が必要になりますので、ご注意ください」


「面倒だ。が、ズルしようとしてる奴は確実に捕まえられる」


「はい、その通りです。そして中には様々な本が蔵書されています。そして本を読む際にはその場で読むのではなく、近くにある席についてお読みください。また、読み終わった際には元の場所に戻して下さい。また、本の持ち出しは禁止されています。本にはある魔法が掛けられているので、持ち出そうとすれば警報がなり直ぐに分かりますので、くれぐれも変な気は起こさないように」


「へえ、ある魔法、ね」


「ここまでで以上となります。なにか質問したいことはありますか?」


「本を汚したり、破ったりしたら?」


「その場合は弁償、または別の紙に書き写すことになります。ついでですが、本を持ち出すことは禁止ですが、模写したものを持ち出すことは可能です」


「それだと図書館としての価値が薄れねぇか?その本を売ったりすれば尚更」


「はい、ですがこの図書館には万を超えるほどありますので、全てを模写することは一生かけても叶わないでしょう」


「確かにな。聞きたいことは以上だ」


「はい、最後に図書館内では静かにお過ごしください。中に入ると目の前に本の場所が分かる地図があります」


「サンキューな。んじゃ」


俺は早速中に入る。


「うおぉ、めっちゃデケェな」


図書館は俺か想像していたよりも大きかった。2階があるかは分からんが、天井が高ぇ。まるで巨人のために用意したみてぇだ。


「ま、早速本を探すか」


俺は地理、歴史、魔法、伝説、伝記、などいわゆると言われる範囲のことが書いてある本を探した。














ざっくり説明すると。この国は世界史で例えるなら、三国志のような状態だ。その三国の名前はゼルファー王国、スペンサー帝国、ハーベスト教国の3カ国の力が拮抗している。この国はスペンサー帝国だそうだ。


その他にも三国には到底及ばない弱小国家が何個かある。その中でも特筆すべきなのは、ヴァンツァレィヴルとジャンムブル。前者はエルフやドワーフなど人と魔物が合わさったような見た目や特徴を持っている。後者は獣人と言われる人の特徴に獣の特徴や能力を引き継いだ者のことだ。それぞれその名前で国名を表しているそうだ。それ以外も同じような人の国家だ。


ゼルファー王国は農業に力を入れており、農産物や畜産などの分野が優れている。食料も自給しており、他国への輸出なども多い。


スペンサー帝国は軍事力に力を入れており、新たな魔法や兵器などの開発に資産を投じている。またその魔法などを輸出しているそうだ。


ハーベスト教国はなんと言ってもその信徒の数が多いのが特徴だ。世界最大の宗教であり、他国でも信じている人が多い。その主神はイズウェル、そしてその周りにも7人の神がいる。


創造神:イズウェル

武闘神:マキシム

魔法神:マギドナ

生命神:セルタリア

環境神:ゾルガイア

知識神:ノレッジニス

感情神:イモーネル


だ。この中でもハーベストはイズウェルを信奉しており、イズウェル教と名乗っている。イズウェル教を信奉していなくとも、神頼みとなれば頭に浮かぶのはイズウェルが普通なのだと。


それぞれ三国はその分野が他国より抜きん出ているだけで、それ以外の部分は三国の中でも大差はなく同じくらい。そのため史実の三国志とは違い、大きな争いがないのだろう。














続いて歴史だ。


この大陸───リーベル大陸───でかつては大戦争が起こった。それ以前より存在していた国はゼルファー王国のみ。その時に圧倒的カリスマと武力で他の人々を束ね、皇帝となり、驚きの発想力によって生まれた武器の数々がスペンサー帝国を作り上げた。また、戦争時に心が荒れ果てた民衆に説いて回り、希望を与えた人が法王として頂点に立ったのがハーベスト教国だ。


昔は国が片手で数え切れる程だったらしいが、その時の大戦の時独立した小国家が大量に増えて、その影響が今でも残り、今では両手を使っても数え切れないほどの国になっている。


大戦のきっかけは詳しく分かってないが、当時のゼルファー王国の王太子が別の国が雇った暗室者によって殺され、その事がバレたことがきっかけだと書いてある。そしてその大戦が執着した頃、エルフやドワーフでも、獣人でもない体の色が暗めの色の種族が現れ無差別に殺して回ったそうだ。それこそが俺が呼び出された原因でもある魔族であり魔王でもある。


まず、魔族とは獣人並みの身体能力を持ち、エルフやドワーフと同じくらい魔法に対する適性が高い種族のことを言う。その身体的特徴として、まず角が生えていること。そして皮膚の色が暗い色をしている。日本で言う黒人と比べても一目瞭然で分かるほどらしい。そしてその魔族というのはどこを拠点としている訳でもなく、様々なところに現れては、事件を起こしているらしい。一説によると、魔族はこことは別の世界に住んでいて、世界を渡る技を覚えているそうだ。にわかには信じ難い話だ。


そしてその魔族と幾度となく交戦をした結果、魔族にもある程度の階級があるらしい。


魔王

二闘神にとうしん

三座龍さんざりゅう

四天王してんのう

五芒頂ごぼうちょう

六魔軍王ろくまぐんおう


と、それぞれの数に合わせた人数いるらしい。まぁ、魔族の中でも指折りに強く、ほかの魔族とは比べ物にならない程らしい。


話は逸れたが、この大陸には神話の時代があった。神話の時代とは、人々が信奉する7柱だけでなく覚まさな神々がまだ地上を跋扈しており、今相手にしている魔物や生物の何百倍、何千倍も強いもので溢れていた時代のことだ。その時に神々はこの大陸を離れる時に置き土産として、様々な武器や道具を残していったらしい。


それは武器を扱う資格のある者は必然的に見つけることが出来るが、資格が無いものは例えどれだけ探したとしても見つけることは出来ないらしい。














「ふわぁ〜あ。やっぱし勉強ってのは楽しくねぇな。でも大体のことは分かった」


街並みや会話の内容を聞いてるだけである程度察しは着いていたが、歴史や地理などに触れることで確信に変わった。


「やっぱし、ここは日本でもなければ地球でもない。言うなれば別世界ってやつだな」


なんか、あの女が言ってたような気がするが、人の話よりも自分で吟味したほうが信用出来る。


「さて、まずは適当に稼ぎますか」


俺はそのまま図書館を出た











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

”真の”勇者の駆逐録 @kimkai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ